2025/07/27

健康講座892 「良い睡眠で健康を守ろう ― 糖尿病・肥満リスクを下げる眠りの習慣 ―」

 


みなさんこんにちは

今日は「睡眠と糖尿病・肥満の関係」、そして「どうすれば質の良い眠りをとれるのか?」について、最新の研究をもとにお話ししたいと思います。

実は、睡眠不足や不規則な睡眠習慣が、糖尿病や肥満のリスクを高めるということが近年の研究で明らかになってきました。
さらに、食事の内容も睡眠の質に大きく影響することが分かってきています。つまり、「何をどれくらい食べるか」が「どれだけぐっすり眠れるか」にも関係しているのです。

では、具体的にどのような研究があり、どんな工夫が私たちにできるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。


睡眠と糖尿病リスクの最新研究

まず注目されたのは、アメリカ・ブリガム アンド ウィメンズ病院が発表した研究です。
この研究では、英国の大規模コホート研究(UKバイオバンク)に参加した約8万4千人を対象に、睡眠習慣と2型糖尿病の発症リスクとの関係を調査しました。

結果は驚きのものでした:

  • 睡眠が不十分、もしくは睡眠パターンが不規則な人は、糖尿病になるリスクが34%高いという結果が出たのです。

  • 特に「平日は睡眠不足で、週末にまとめて寝る」といった不規則な睡眠は要注意。

この研究成果は2024年7月に『Diabetes Care』誌に掲載され、国際的にも注目されました。

研究者のシナ・キアネルシ氏はこう語っています:

「良い睡眠習慣を身につけることが、2型糖尿病の予防に役立つ可能性があるとわかりました。」


睡眠不足がもたらす心身への影響

厚生労働省も、睡眠の重要性を広く呼びかけています。
特に日本人は、平均睡眠時間が世界でも最も短い国のひとつ。仕事や家事に追われて、「自分が寝不足だと気づいていない」人が多いのが現状です。

睡眠不足は次のようなリスクを引き起こすとされています:

▼睡眠不足が引き起こす代表的な健康リスク

  • 肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常症(=メタボリックシンドローム

  • 免疫力の低下 → 風邪やインフルエンザなどにかかりやすくなる

  • 一部のがんのリスク上昇

  • うつ病などのメンタルヘルスの悪化

  • 認知症の発症リスクの増加(中高年以降)

これらは、睡眠研究の世界的権威、筑波大学の柳沢正史教授のインタビューでも繰り返し語られている重要なポイントです。


良い睡眠をとるためのポイント

では、どうすれば良い睡眠を確保できるのでしょうか?
柳沢教授が勧めている主な方法は以下の通りです。

▼良い睡眠のために実践すべきこと

  • 寝室の環境を整える(照明、温度、静けさ)

  • 昼間にしっかり活動する(適度な運動)

  • 自分なりの「入眠儀式」をもつ(ストレッチや読書など)

  • 夕方以降はカフェインを避ける

  • 夜の仮眠や過度なアルコールは控える

たとえば、夜寝る前にスマホを見る習慣がある人は、それを「お風呂に入ったあとからはスマホを見ない」などに変えるだけでも、睡眠の質が向上します。


食事と睡眠の深い関係

筑波大学の別の研究では、「食事の栄養バランスと睡眠の質」に注目した大規模な調査が行われました。

対象は、「Pokémon Sleep(ポケモンスリープ)」という睡眠記録アプリと、「あすけん」という食事記録アプリを併用している4,825人です。
スマホの加速度センサーを使って睡眠の「量と質」を測定し、食事からの栄養摂取との関連を統計的に分析しました。

その結果、以下のようなことがわかりました:

栄養素・習慣 睡眠への影響
総エネルギー摂取量が多い 総睡眠時間が短くなり、中途覚醒が増える
タンパク質が多い 総睡眠時間が長くなる
食物繊維が多い 睡眠潜時(寝つき時間)が短く、中途覚醒も減る
ナトリウムが多くカリウムが少ない 睡眠時間が短くなり、寝つきやすさも悪化
一価不飽和脂肪酸が多い 睡眠の質を下げる可能性
多価不飽和脂肪酸が多い 寝つきやすく、途中で目覚めにくくなる

つまり、タンパク質・食物繊維・カリウムを意識的にとることが、質の良い睡眠につながることが示されました。


実際にどう取り入れたらいいの?

▼おすすめの食事のポイント

  • 朝食・昼食でしっかりタンパク質(卵・納豆・ヨーグルト・豆腐・魚など)

  • 野菜や海藻・キノコで食物繊維を補給

  • 減塩を心がけ、カリウムが多い野菜・果物をとる(例:バナナ、ホウレンソウ)

そして、寝る直前にたくさん食べるのは避けましょう。
夕食は就寝の3時間前までに済ませるのが理想です。


睡眠の改善で人生が変わる?

最後にひとこと。
「睡眠」は、私たちが無料で手に入れられる最も強力な健康法のひとつです。

  • ダイエットしても痩せない

  • 血糖値がなかなか下がらない

  • なんとなく毎日イライラしている

そんなときは、まず「寝る時間と質」を見直してみてください。
1日7時間程度の良い睡眠が、糖尿病やメタボ、うつ、認知症などのリスクを大きく減らすかもしれません。


まとめ

  • 睡眠不足や不規則な睡眠は、糖尿病・肥満・メンタル不調などのリスクを高める

  • タンパク質・食物繊維・カリウムを意識した食事は睡眠改善に効果的

  • 睡眠環境や生活リズムを整えることで、より良い眠りが得られる


みなさんも、今日から「ぐっすり眠るための習慣づくり」を始めてみてはいかがでしょうか?
それが、10年後、20年後の自分の健康を大きく変える第一歩になるかもしれません。



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