皆さんこんにちは。
今回は、2025年7月に発表された最新の研究論文
「前糖尿病(prediabetes)と脂肪肝指数(FLI)が中年期の心血管疾患や死亡リスクに与える影響」
についてご紹介していきます。
🔍この研究の目的(Background)
この研究では、以下の2つの体の状態が重なるとどうなるのかを調べました:
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前糖尿病(prediabetes)
→ 糖尿病ではないけれど、血糖値が正常より高く、将来糖尿病になるリスクが高い状態です。
(例:空腹時血糖が100〜125mg/dL、HbA1cが5.7〜6.4%) -
脂肪肝指数(Fatty Liver Index, FLI)
→ 血液検査や体格から、肝臓に脂肪がたまっている可能性を推測する数値です。
特にFLIが60以上だと、脂肪肝(肝臓に脂肪がたまっている状態)の可能性が高いとされます。
これら2つが一緒にある人は、糖尿病(DM)、心臓や血管の病気(MACE)、そして死亡率にどれだけ影響を与えるのかを調べたのが本研究です。
👥 研究に参加した人(Methods)
対象となったのは、40〜65歳の中年期の男女 1,182,751人。
全員が、調査開始時点では糖尿病も心血管疾患もなかった人たちです。
彼らをいくつかのグループに分けて、以下のようなリスクを何年かにわたって追跡しました:
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新たに糖尿病を発症するか(Incident DM)
-
心筋梗塞や脳卒中などの**重大な心血管イベント(MACE)**が起こるか
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すべての原因による死亡(All-cause mortality)
🧪 結果(Results)
全体のうち:
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24.6%の人は前糖尿病でした
-
8.8%の人はFLIが60以上でした(=脂肪肝の疑いあり)
それぞれの状態が単独でもリスクを高めることがわかりましたが、前糖尿病+FLI≥60のように両方が重なると、リスクがさらに高まることが明らかになりました。
具体的には:
① 糖尿病になるリスク(Incident DM)
| 状態 | 糖尿病の発症リスク(OR) |
|---|---|
| 前糖尿病 + FLI<60 | 3.75倍 |
| 正常血糖 + FLI≥60 | 2.35倍 |
| 前糖尿病 + FLI≥60(両方あり) | 6.80倍 |
👉 両方あると、6.8倍も糖尿病になるリスクが高まります。
② 心血管疾患のリスク(MACE)
| 状態 | MACEのリスク(OR) |
|---|---|
| 前糖尿病 + FLI<60 | 1.02倍(ほぼ変わらず) |
| 正常血糖 + FLI≥60 | 1.23倍 |
| 前糖尿病 + FLI≥60(両方あり) | 1.27倍 |
👉 脂肪肝がある人で心血管病のリスクが高まることがわかります。
③ 全ての死因による死亡リスク(All-cause mortality)
| 状態 | 死亡リスク(OR) |
|---|---|
| 前糖尿病 + FLI<60 | 1.12倍 |
| 正常血糖 + FLI≥60 | 1.51倍 |
| 前糖尿病 + FLI≥60(両方あり) | 1.69倍 |
👉 前糖尿病と脂肪肝の両方を持っている人は、死亡リスクが69%も高くなるという結果です。
🧠 まとめ(Conclusion)
この研究から言えることは:
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前糖尿病(血糖が少し高め)
-
脂肪肝の疑い(FLIが60以上)
この2つの状態が合わさると、それぞれ単独のときよりも糖尿病・心臓病・死亡のリスクが大きく高まるということが、非常に大規模な調査から明らかになりました。
💬 研究の意義と今後へのヒント
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今までも「前糖尿病」や「脂肪肝」がそれぞれ危険だとはわかっていましたが、「両方が重なったときにどうなるか?」をここまで大規模に明らかにしたのは画期的です。
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40〜65歳という、まさに働き盛りの年代において、健康診断で「血糖値ちょっと高い」「脂肪肝の疑いあり」と言われたら、要注意ということです。
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医療現場では、前糖尿病や脂肪肝の段階から生活習慣を改善することの重要性が、あらためて強調されるべきでしょう。
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