2025/08/11

健康講座901 「減塩+カリウムアップ」で血圧を守る食べ方とは 〜魚介スープの意外な健康効果と、今日からできる減塩習慣〜

 

皆さんこんにちは。

今回は、「高血圧対策としての減塩の重要性」と「ラーメンと食塩の関係」について、最新の研究結果をもとに、わかりやすく解説していきます。
ラーメンは日本人にとってとても身近で人気のある食べ物ですが、食塩が多く含まれていることをご存じですか?
「ラーメン=血圧に悪い」と思っている方も多いかもしれませんが、実は“魚介スープのラーメン”には、血圧を上げにくい可能性があるという研究結果も出ています。
今回はその真相について、食塩とカリウムの関係も含めて、やさしく解説します。


高血圧と塩分の関係 〜塩をとりすぎるとどうなる?〜

まず、「高血圧(こうけつあつ)」とは何かを確認しておきましょう。
高血圧とは、血管の中を流れる血液の圧力が常に高い状態のことです。この状態が長く続くと、心臓や血管に負担がかかり、心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳梗塞(のうこうそく)などの大きな病気のリスクが高くなります。

そして、この高血圧の大きな原因の1つが 「塩分(ナトリウム)」のとりすぎ です。
日本人は味噌、醤油、漬物、そしてラーメンなどの麺類などから、塩分を多く摂る傾向があります。

▽ どうして塩分をとりすぎると血圧が上がるの?

塩分(ナトリウム)をとりすぎると、体はそれを薄めるために水分を溜め込もうとします。
その結果、血液の量が増えて血管にかかる圧力(=血圧)が上がるのです。


カリウムの役割 〜ナトリウムを外に出す助け役〜

では、塩分をとったら終わりかというと、そうではありません。
体にはナトリウムの量を調節する仕組みがあります。
そのときに重要な働きをするのが「カリウム」という栄養素です。

▽ カリウムのすごい力

カリウムは、ナトリウム(塩分)を体の外に出すのを助ける働きがあります。
つまり、カリウムをしっかりとると、塩分を体から排出できて、血圧が下がりやすくなるのです。

このように、**「ナトリウムを減らす」「カリウムを増やす」**という2つの対策が、高血圧の予防にはとても大切です。


ラーメンと塩分 〜なぜラーメンが問題になるの?〜

ここからはラーメンの話に移ります。
ラーメンには、「スープにたっぷりの塩分が含まれている」ことが多く、1杯で1日の塩分摂取目安(6g未満)を超えてしまうことも珍しくありません。

▽ 人気ラーメン店のラーメンを調べてみたら…

京都府立大学の研究チームは、京都市内の人気ラーメン店24店舗のラーメンを調査しました。
食べログで高評価を得ている店舗から、合計52食分のラーメン(スープ・具材を含む)を集めて、以下の成分を測定しました。

  • 食塩の量(ナトリウム)

  • カリウムの量

  • そのバランス(ナトリウム/カリウム比=ナトカリ比)

▽ ナトカリ比とは?

ナトカリ比とは、「ナトリウムの量 ÷ カリウムの量」で表される数値です。
この値が高いほど「塩分が多く、カリウムが少ない=血圧に悪い食事」と判断されます。
逆にナトカリ比が低ければ、「塩分が少なく、カリウムが多い=血圧にやさしい食事」です。


魚介スープのラーメンは、実は“血圧にやさしい”かも?

研究の結果、ラーメン全体では1杯あたりの平均食塩量が 6.7g で、カリウム量は 448mg、ナトカリ比は 10.7 でした。
この数値は、高血圧の予防には「やや不利」といえます。

しかし、スープの出汁(だし)の種類によってナトカリ比に差があることがわかりました。

出汁の種類 ナトカリ比 塩分(ナトリウム) カリウム
魚介系(煮干し・鰹節など) 最も低い(血圧にやさしい) 少ない 多い
鶏ガラ系 中間 やや多い やや少ない
豚骨系 最も高い(血圧に悪い) 多い 少ない

▽ なぜ魚介系スープが良いの?

  • 魚介からとったスープには、カリウムがたっぷり含まれている

  • カリウムには「塩味を強く感じさせる効果」があるため、少ない塩でもおいしく感じられる
    → その結果、使う食塩の量を減らせるのです。


ラーメンを食べたい人へのアドバイス

「血圧が高いけど、どうしてもラーメンが食べたい!」という方に向けて、以下の工夫を紹介します。

● スープを全部飲まない

ラーメンの塩分の大半はスープに含まれています。
スープを残すだけで、塩分摂取を半分以下に抑えることができます。

● 野菜を一緒に食べる

野菜にはカリウムが豊富です。
サイドメニューでサラダやゆで野菜を加えたり、トッピングに野菜を選ぶことで、ナトカリ比が改善されます。

● 魚介スープのラーメンを選ぶ

どうしてもラーメンを食べたいときは、魚介系スープを選ぶと、比較的カリウムが多く、血圧への悪影響を和らげやすいです。


どんな食事が塩分が多くなりやすいの?

東京大学の研究チームも、別の角度から「食塩が多くなりやすい食事」について調べました。
2,757人を対象に6万食以上のデータを解析した結果、以下のような傾向が明らかになりました。

塩分が多くなりやすい食事パターン

  • 麺類(ラーメン、うどん、そばなど)を主食とする食事

  • 汁物(味噌汁、スープなど)がある食事

  • 漬物をよく食べる食事

  • 加工肉・加工魚(ハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわなど)を含む食事

  • 外食(特にレストランやラーメン店)

  • アルコールを伴う食事

  • 秋・冬など寒い季節

塩分が少ない傾向にある食事

  • 果物が含まれている


減塩のためにできること

食塩を減らすために、日常生活でできる工夫はたくさんあります。

▽ 控えるべき食品・調味料

  • 汁物(味噌汁、スープ)

  • 漬物

  • 加工肉・加工魚(ハム、ソーセージ、かまぼこなど)

  • 塩・醤油・味噌などの調味料をたくさん使うこと

▽ 積極的にとりたいもの

  • 野菜(特にカリウムの多いもの:ほうれん草、小松菜、にら、キャベツなど)

  • 果物(バナナ、キウイ、みかんなど)

  • 海藻(わかめ、昆布など)

  • いも類(じゃがいも、さつまいもなど)

  • 減塩調味料、酢や柑橘類の果汁

  • ハーブやスパイス(塩を使わずに風味を出す)


最後に:減塩+カリウムアップで、血圧と上手につきあう

私たちの食生活は、無意識のうちに塩分をとりすぎてしまいやすい傾向があります。
特にラーメンや外食が多い人、寒い季節に汁物や漬物を好む人は、知らず知らずのうちに血圧に負担をかけているかもしれません。

でも大丈夫。
「ナトリウムを減らす+カリウムを増やす」
この2つを意識するだけで、血圧のリスクを大きく減らすことができます。

そして、ラーメンも“全てが悪”ではありません。
魚介スープを選んだり、スープを残したり、野菜と一緒に楽しむなどの工夫をすることで、塩分を減らしながらおいしく食べることもできます。


参考文献・出典

  • 京都府立大学 農学食科学部 栄養科学科 奥田奈賀子教授
    「Na and K Content and Na/K Ratio of Ramen Dishes Served in Ramen Restaurants in Kyoto City, Japan」Dietetics誌 2025年6月3日

  • 東京大学大学院医学系研究科 社会予防疫学分野
    「Ecological momentary assessment of meal context and food types contributing to salt intake at meals」
    International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity誌 2025年6月28日

  • 日本高血圧学会 減塩・栄養委員会

  • 日本高血圧学会 尿ナトリウム/カリウム比ワーキンググループ



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