2025/08/20

健康講座910 🔷SGLT2阻害薬によるDKAの特徴と注意点を徹底解説! 〜血糖値が高くないケトアシドーシスに要注意〜

 皆さんこんにちは。

今日は「SGLT2阻害薬を使用している患者さんにおけるケトアシドーシス(DKA)の臨床的特徴と予後」について、2025年7月に発表された最新のシステマティックレビュー・メタアナリシスを、専門用語をやさしく解説しながらご紹介します。



🔍 まずは基本をおさらい

✅ SGLT2阻害薬とは?

糖尿病治療薬の一種で、腎臓でのブドウ糖の再吸収を防ぎ、尿から糖を排出させて血糖を下げる薬です。商品名にはジャディアンス(エンパグリフロジン)、**フォシーガ(ダパグリフロジン)**などがあります。

⚠️ DKA(糖尿病性ケトアシドーシス)とは?

体のインスリンが不足したとき、ブドウ糖が使えず、脂肪をエネルギーにしようとします。その結果、「ケトン体」が大量にできて、血液が酸性になる状態。命に関わることもある緊急状態です。


🧪 研究の目的は?

SGLT2阻害薬を使っている人がDKAになると、**血糖値がそれほど高くない「ユージリセミックDKA」**になることが多く、見逃されやすいのが問題です。

この研究では、
「SGLT2阻害薬を使っている人のDKAって、他の人と比べてどんな特徴があるのか?」
「治療結果に違いはあるのか?」
を明らかにするため、過去の9つの研究をまとめて分析しました。


📊 分析のポイント

  • 文献はPubMed、Scopus、Web of Scienceから2025年2月までに収集

  • 「SGLT2阻害薬を使っている人 vs 使っていない人」でDKAの特徴や予後を比較

  • **オッズ比(OR)平均差(MD)**を使って統計的に比較


🧾 主な結果まとめ

① SGLT2阻害薬ユーザーのDKAはこんな傾向がある!

比較項目 SGLT2iユーザー(DKA) 非SGLT2iユーザー(DKA) コメント
DKAの既往 少ない 多い 新規発症が多い傾向
インスリン使用歴 少ない 多い 2型糖尿病の経口薬のみ使用の人が多い?
血糖値 低い 高い ユージリセミックDKAが多い証拠
HbA1c(平均血糖の指標) 低い 高い 血糖コントロールは悪くない場合でも発症
クレアチニン(腎機能) 低い やや高い 腎障害の合併が少ない傾向?
乳酸値 低い 高い 乳酸アシドーシスとの合併が少ない?

② 予後(入院や死亡)には違いはあった?

指標 結果
入院期間 差なし
ICU入室率 差なし
院内死亡率 差なし

👉 つまり、「命に関わる重症度」や「治療にかかる時間」は、使っているかどうかで大きな違いはなかったという結果です。


💡 この研究から分かること(ポイント3つ)

1. 見た目が違うDKAに注意!

SGLT2阻害薬使用中のDKAは、高血糖を伴わない場合があり、「普通のDKAと違う」と見逃されやすい。症状(吐き気、倦怠感、呼吸)から疑う力が必要です。

2. HbA1cや血糖値が良好でも油断禁物

「血糖コントロールが良好=安心」ではない。特に絶食や手術、体調不良などのトリガーがある場合は、SGLT2阻害薬を中止する判断も重要です。

3. 死亡率は高くないが油断は禁物

予後には差がなかったとはいえ、DKA自体は重篤な病態。早期発見と対応が何よりも大切。


🧑‍⚕️ 実臨床でどう活かす?

  • SGLT2阻害薬を使っている患者さんが「なんとなくだるい・吐き気・呼吸が早い」などの症状を訴えたら、血糖値が高くなくてもケトン体やpHをチェック

  • 食事がとれない・発熱・手術前後などでは一時的に休薬も検討する

  • スタッフ間で「ユージリセミックDKA」という概念を共有しておくと、見逃しが減る


📝 最後にひとこと

この論文は、「SGLT2阻害薬の副作用としてのDKA」は“珍しいけれど見逃しやすい”という点に光を当てており、現場でも役立つ情報がつまっています。

血糖がそこまで高くなくても、「ケトアシドーシスかも」とピンとくる感覚を持っていることが、患者さんの命を守るカギになるかもしれません。



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