2025/12/19

健康講座934  もう“しびれ頼み”の診断は終わり。糖尿病性神経障害を客観的に見抜く3つの指標とは?

 


皆さんこんにちは。
今日は、糖尿病の合併症の中でも特に多くの方が悩む 「糖尿病性末梢神経障害(DPN)」 について、最新の研究をもとに “客観的に診断できる方法” を、とてもわかりやすくお話ししていきます。

糖尿病があると、時間の経過とともに足のしびれ、ピリピリ感、痛み、感覚の鈍さなどが出てくる人がいます。
でも実はこの症状、単に「しびれの有無」だけでは正確に診断できません。

■「症状が軽いのに神経が相当悪くなっている人」

■「症状は強いのに神経障害そのものは軽い人」

が両方存在するからです。

そこで今回紹介するのが、2025年に発表された非常に注目度の高い研究。
従来の“複雑で時間のかかる電気生理検査(EMG)”と比べても遜色ない精度で、しかも 短時間で簡単にできる 新しい診断法が示されました。

この記事では、
患者さんにも医療従事者にも「なるほど、こういうことだったのか」と思っていただけるよう、
専門用語をひとつひとつ丁寧に説明しながら、できるだけ 読みやすく、親しみやすく 解説していきます。


🔍 研究タイトルと背景:なぜこの研究が必要だったのか?

論文タイトルは少し長いのですが、内容をやさしくまとめると:

「心電図のR-R間隔の変動(CVR-R)と、指先サイズの簡易神経伝導デバイスを使ってDPNを診断すると、従来の電気生理検査と高い一致率を示した」

というものです。

従来、DPNの診断は「症状」と「医師の診察所見(触覚や腱反射など)」が中心でした。
しかし、

  • 症状と実際の神経障害の進行が一致しない

  • 医師によって診察のばらつきがある

  • 客観的データが得にくい

  • 治療薬の効果評価に使える“客観指標”が不足していた

といった理由で、医学界では “より客観的な診断方法” が求められてきました。

そこで登場したのが、

CVR-R(心電図) × SNCV(後脛骨神経伝導速度) × SNAP(感覚神経電位振幅)

という3つの指標です。


🧠 この研究が注目される理由:診断の「客観性」が大きく進歩

糖尿病性神経障害は、進行すると痛みやしびれが悪化し、転倒リスクの増加、足潰瘍、最悪の場合は切断に至るケースもあります。

しかし早期の段階では、本人がまったく症状を感じていないことも多いのです。

そこで重要なのが:

症状に依存しない “客観的に見える化された診断”

です。

この研究では、電気生理検査という従来の“基準”に匹敵する精度で、しかも簡便な方法が確立できるかどうかを調べました。


📌 研究の3つのキーツール

では、ここから1つずつ超わかりやすく説明していきます。


① CVR-R(心電図のR-R間隔変動)

自律神経の働きをみる指標。

心電図の波形の「R波とR波の間隔」が毎回少しずつ違うことをご存じでしょうか?

実はこれは自律神経(交感神経と副交感神経)が心臓のリズムを調節しているためです。

  • 正常な人 → バラつきがある

  • 自律神経障害がある → バラつきが小さくなる

この“バラつき度”を CVR-R と呼びます。

糖尿病では自律神経障害が早い段階で生じやすいため、CVR-RはDPNの早期発見にもつながります。

◎ この研究でのカットオフ値

CVR-R ≤ 1.62%

この数値以下なら「自律神経障害が疑われる」という目安になります。


② SNCV(後脛骨神経の伝導速度)

後脛骨神経は足の外側を走る感覚神経です。
糖尿病性神経障害が進むと、

神経の“電気信号のスピード”が遅くなる

=ニューロン(神経細胞)がダメージを受けている

という状態になります。

これを測定するのが SNCV(神経伝導速度) です。

簡易装置(DPNCheck™)では、測定時間はわずか数十秒。
痛みもありません。

◎ カットオフ値

SNCV ≤ 46.5 m/s

これを下回ると神経のスピードが遅い、つまり障害が疑われます。


③ SNAP(感覚神経活動電位の振幅)

神経に軽い電気刺激を与えたとき、
どれだけ大きな“電気の返事”が返ってくるかを測る指標です。

返ってくる電気信号が小さくなるのは、

「神経細胞そのものの数が減っている」

という意味があります。

これが SNAP(Sensory Nerve Action Potential) です。

◎ カットオフ値

SNAP ≤ 10.5 μV


🧪 研究の方法:314人の糖尿病患者で検証

この研究では多施設で入院糖尿病患者を対象とし、以下を全員に実施しました:

  • 標準的電気生理検査(従来法)

  • 簡易神経伝導検査(DPNCheck™)

  • CVR-R(心電図)

その後、従来法で
ステージ2以上=DPNあり
と判定されたかどうかを基準とし、

どの指標がどれだけ“本当にDPNを説明できるか”を統計学的に検証しました。


📊 結果:この3つの指標が非常に有効だった

結論として意味があったのはこの3つ👇

  • CVR-R

  • SNCV(最も高い精度)

  • SNAP

特にSNCVのAUC(診断精度)は 0.823 とかなり高く、従来の電気生理検査とよく一致していました。

🔥ポイント

3つの指標のうち2つ以上が基準値以下なら → DPNありの可能性が高い(精度79.3%)

これは臨床現場でとても使える数値です。


🧾 この研究が意味すること:診断の“見える化”が大きく進む

患者さんの「しびれ」や「痛み」といった主観的な症状はとても大事です。
しかし、それだけでは正確に病気を評価できないこともあります。

この研究で示されたのは、

✔ “症状”ではなく“数値”で評価する時代へ

✔ 診療の質向上・早期発見・治療効果判定に応用できる

という大きな前進です。

特に外来診療で短時間にできるという点は、
現場の医師にとっても大きなメリット。


🩺 臨床的なメリット

✔ 神経障害を早期に見つけられる

症状が出る前でも異常がわかる。

✔ 神経障害の進行具合を数字で追える

治療の効果を評価しやすい。

✔ 痛みを伴わない検査

ストレスが少なく、繰り返しやすい。

✔ 高齢者や認知症の方でも診断が安定

症状の表現が難しい方にも有効。


🧩 専門用語まとめ

  • DPN
    糖尿病による神経の弱り。足のしびれ・痛み。

  • CVR-R
    心臓のリズムのバラつき。自律神経の健康度。

  • SNCV
    神経の電気のスピード。

  • SNAP
    神経から返ってくる電気の強さ。


🌟 まとめ:3つの指標で“見える化された診断”が可能に

今回の研究で示された基準値は以下の通りです:

  • CVR-R ≤ 1.62%

  • SNCV ≤ 46.5 m/s

  • SNAP ≤ 10.5 μV

この3つのうち
2つ以上が基準値以下 → 糖尿病性神経障害の可能性が高い(精度79.3%)

特にSNCVが最も精度に優れていました。


✏️ 最後に

糖尿病性神経障害は“治らない”と思われがちですが、
実際には 早期発見・早期介入によって進行を遅らせる ことが十分可能です。

今回の研究は
「客観的で再現性の高い診断法」 を確立する重要な一歩。

みなさんが安心して自分の体の状態を理解し、
適切な治療につなげられるよう、
引き続き新しい情報をわかりやすくお届けしますね。



0 件のコメント:

コメントを投稿

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...