2025/12/21

健康講座936 仮想現実ゴーグルを使ったダイエットの新常識──VRが体重維持に効く理由


〜仮想現実が“リバウンド対策の切り札”になる日は来るのか?〜


皆さんこんにちは。
今日は、ちょっとワクワクする最新医学研究――

「仮想現実(Virtual Reality=VR)を使ってダイエットを手伝ったら効果はあるの?」

というテーマの論文を、
優しく・面白く・専門用語もわかりやすく
じっくり解説していきます。

なぜ今 VR がダイエット研究の世界で注目されているのか?
なぜ「体重を落とす」より「落とした体重を維持する」ことの方が難しいのか?

そして……

最新メタ解析では、「VRはリバウンド防止に効くかもしれない」という面白い結果が出ました。

でもそこには医学研究ならではの“裏側”や“注意点”もあります。

このブログでは、

  • VR ってそもそも何?

  • なぜ心と脳に働きかけてダイエットを助けるの?

  • この研究では何を調べたの?

  • 本当に痩せる?維持できる?

  • どんな人に向いてそう?

  • 医師の視点から見た注意点は?

VR ダイエットの最新知見を、ぜひ楽しみながら読んでください。



■ 1. まず、VR(仮想現実)って何?

〜ダイエットとどう関係あるの?〜

「VR」と聞くと、

  • ゲーム

  • メタバース

  • ゴーグルをかぶって異世界に入るやつ

といったイメージを持つ方が多いと思います。

もちろんそれで正解ですが、医学的には VR はもう少し広い意味を持っています。


◎ VR(Virtual Reality:仮想現実)の医学的な定義

VRとは、

“頭に装着するディスプレイ(HMD:Head-Mounted Display)を使って、視覚・聴覚・体性感覚などを仮想空間で再現し、脳が「そこにいる」と錯覚する技術”

と定義できます。

実際の医学応用としては:

  • 慢性痛の治療(注意を痛みから逸らす)

  • パニック障害・PTSD・恐怖症のリハビリ

  • 外科手術のシミュレーション学習

  • 認知症ケア

  • リハビリテーション

など、すでに多方面で使用されています。


◎ VR × ダイエットはどうつながる?

ここが面白いところです。

ダイエットは、

  • 食欲

  • 衝動

  • 習慣

  • ストレス

  • 自己効力感

などの「心理的要因」が強く影響します。

VR は 脳の体験を“書き換える”力があるため、次のような応用が期待されています。


● VRで食欲コントロールを学ぶ

例えば、

  • 食事をする前に VR で「ゆっくり噛む感覚」や「満腹シグナルへの気づき」を練習する

  • 高カロリー食の誘惑に耐えるトレーニングを行う

  • 食べ過ぎの原因となる“情動的な食行動”を分析・改善する

といった使い方があります。


● VRで「痩せた未来の自分」を体験する

これをバーチャル・ボディスワップと呼ぶ研究者もいます。

実際にゴーグルをつけると、痩せた自分の体型に入れ替わったような体験ができます。

研究では、

“未来の健康的な自分を視覚的に体験すると、行動変容のモチベーションが高くなる”

という結果も出ています。


● VRで運動のモチベーションを維持する

  • VRの世界でウォーキング

  • ゲーム感覚で運動

  • 仲間と仮想空間でワークアウト

飽きやすい人のサポートとして期待されています。



■ 2. 今回の研究は何を調べたの?

〜「VRは本当に痩せるの?」というシンプルな疑問〜

今回の論文は 2025年12月3日に発表された最新のメタ解析です。

研究タイトルは:

Evaluating the use of virtual reality for weight management: A systematic review and meta-analysis

つまり、

「VRを使った体重管理は本当に効果があるのか?」
→ 複数の研究を統合して調べよう!

という研究です。


◎ 対象となった研究の条件

研究の基準は次の通り:

  • 対象は「成人の減量治療」

  • VR は「従来治療を補助するために使用」

  • 体重または BMI の変化を評価している

  • VRなしの従来治療と比較している

“ただの VR 運動ゲーム”のような研究は含まれていません。

あくまで

「通常のダイエット治療に VR を追加したら効果が上がるか?」

を見ています。


◎ どれくらいの研究が採用された?

  • 11件をレビュー

  • 10件をメタ解析に使用

医学研究では “10件以上のメタ解析” はそこそこ信頼に値します。



■ 3. 結果:VRは「痩せる」ではなく「維持に効く」

〜もっとも重要なポイント〜

ここが今回の研究のハイライトです。


◎① 介入期間中(ダイエット中)

VRあり vs なし → 効果は同じ

つまり、
VRがあるからといって短期的に痩せるわけではない

これは意外かもしれません。


◎② 維持期(フォローアップ期間)

VRのほうが体重維持が良い(約5.16kg差)

維持期とは:
ダイエットが終わったあと、数ヶ月後・半年後などの“リバウンドの時期”。


★重要:−5.16kgの意味

従来治療よりも 平均で5kg以上、体重が軽い状態を維持 できていたということです。

これはかなり大きな差です。

なぜなら……

ダイエット治療の世界では、

「落とすより、維持するほうが10倍難しい」

と言われています。

誰もが経験している“リバウンド問題”ですね。

VR がこの維持期に効果的だった点は非常に注目されます。


◎③ 研究の質には注意が必要

論文は次の点を強調しています:

  • 対象研究は少ない

  • 透明性や研究手続きに問題があるものもある

  • より質の高い臨床試験が必要

つまり、

「効果あり!」と断言するのはまだ早い
でも“可能性は十分にある”

という段階です。



■ 4. なぜVRは「体重維持」に効果があるのか?

〜脳科学 × 行動変容のメカニズム〜

ここからは医学的にどう理解すべきかを解説します。


【理由①】VRは「習慣形成」を助ける

人は、

  • 食習慣

  • 感情による食行動

  • 夜の過食

  • ストレス食い

など“行動パターン”に支配されています。

VRは

  • 自分の食事シーンを俯瞰する

  • 食べ過ぎの直前の自分を再現する

  • 理想的な行動を練習する

など、“行動を書き換える”ための訓練ができます。


【理由②】自己効力感(セルフエフィカシー)が上がる

心理学では、

「できる気がする」という感覚(自己効力感)が高いほど行動は継続する

とされています。

VRは感覚的に達成体験を積ませる技術なので、
行動継続にとても向いています。


【理由③】視覚的な「未来の自分」が強力

研究では、

  • 痩せた自分

  • 健康的に動く自分

  • 食べ過ぎない自分

これらを VR で体験すると、
脳の“自己表象”が変化します。

これによって

無意識の意思決定が健康的な方向へ傾く

という説もあります。


【理由④】楽しさ・没入感で離脱率が下がる

ダイエット治療の一番の敵は「継続できないこと」。

VR はゲーム性があり、

  • 飽きにくい

  • ストレスが軽減される

  • ポジティブな感情が生まれる

という効果が期待できます。



■ 5. 結論:VRは“痩せさせる器具”ではなく“リバウンド防止装置”になり得る

今回の研究メッセージをまとめるとこうです。


▼短期(ダイエット中)

  • VRが特別優れているわけではない

  • 体重の減り方は従来治療と同じ


▼長期(維持期)

  • VR の方がリバウンドしにくい可能性

  • 約 5kg の差は非常に大きい


▼ただし注意点

  • 研究数が少ない

  • 質の低い研究も混じっている

  • 結論はまだ“確定”ではない

  • これからの臨床試験に期待



■ 6. 医師の視点:どんな人にVRは合いそうか?

整理すると、


◎ VRが向いているタイプ

  • 運動が苦手

  • 食べ過ぎの原因が「感情」や「ストレス」にある

  • モチベーション維持が難しい

  • 未来の自分をイメージしづらい

  • ゲーム好き・飽きやすい


◎ VRが向いていないタイプ

  • そもそもデバイスが苦手

  • VR酔いしやすい

  • すでに強い習慣化ができている

  • 心理的アプローチに興味がない


◎ VRダイエットの現実的な位置づけ

VRは、

「魔法のように痩せるツール」ではなく
「行動を継続しやすくするサポートデバイス」

と理解するのが最も正確です。



■ 7. 今後の研究の課題

論文が指摘しているように、今後必要なのは:

  • より大規模で質の高い臨床試験

  • 長期フォローの実施

  • VRの使用方法の標準化

  • 心理的メカニズムの解明

特に、

「なぜVRは維持期に効くのか?」

これは今後のダイエット研究を左右する重要テーマです。



■ 8. まとめ:VRはダイエットの“第三の波”になるかもしれない

ダイエットの世界は、これまでに大きく3つの波がありました。


第1の波:食事制限

→ カロリー制限、糖質制限など

第2の波:運動・筋トレ

→ ジム・アプリ・スマートウォッチ

第3の波:行動科学 × テクノロジー

→ 心理、脳、習慣、VR、AI


VRはまさに 第3の波の中心にある技術です。

今回の研究はまだ小規模ではあるものの、

「短期的な減量効果ではなく、長期的な維持効果が高まる」

という、非常に興味深い結果を示しました。

ダイエット成功の本質は「続けられるかどうか」。

VR がその“継続の壁”を越える手助けになる日は、
そう遠くないかもしれません。



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