マンジャロやウゴービを使い始めてから、「髪の毛が以前より抜けるようになった」と感じる方がいます。
洗髪時にごっそり抜けたり、枕や排水口に髪の毛が目立ったりすると、「このまま薄毛が進んでしまうのではないか」と心配になりますよね。
結論から言うと、マンジャロやウゴービの使用中に抜け毛が増えることはあります。
ただし、現時点では「薬が直接毛根を壊している」とはっきり証明されているわけではありません。実際には、薬によって食事量が減り、短期間で体重が落ちたことや、たんぱく質・鉄などの栄養が不足したことが関係している可能性が高いと考えられています。
抜け毛の報告はどのくらいあるのか
抜け毛の頻度は、薬の種類、対象となった患者さん、調査方法によって数字が異なります。
ウゴービについては、米国の添付文書で、成人の臨床試験をまとめると、2.4mg使用群の3.3%、プラセボ群の1.0%に脱毛が報告されています。また、添付文書には、脱毛の発生は体重減少と関連していたと記載されています。[参考:米国FDA添付文書](https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2026/215256s025lbl.pdf)
一方、マンジャロについては、米国の添付文書で市販後に「脱毛」の報告が記載されています。ただし、市販後の自発報告からは、実際の発生率や薬との因果関係を正確に計算することはできません。[参考:米国FDA添付文書](https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2025/215866s039lbl.pdf)
最近発表されたメタ解析では、GLP-1受容体作動薬を使用した人の脱毛発生率は約3.9%と推定され、プラセボと比べた脱毛リスクは約3.25倍でした。もっとも、この解析に含まれた研究は9件、対象者は4,114人で、脱毛の定義や確認方法も統一されていません。数字としては参考になりますが、「薬が直接の原因である」と断定できる内容ではありません。[Chengら、2026年](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42155605/)
つまり、「抜け毛は起こり得るが、使った人全員に起こるわけではない」という理解が適切です。
マンジャロとウゴービのデータは、そのまま比較できない
ここは少し注意が必要です。
マンジャロは、日本では主に2型糖尿病の治療薬として使用されます。一方、ウゴービは肥満症に対する薬です。
また、海外ではマンジャロと同じ成分のチルゼパチドが、肥満症治療薬のゼップバウンドとして使われています。脱毛のデータの中には、肥満症を対象としたゼップバウンドの試験結果が含まれていることがあります。
糖尿病患者さんを対象にしたマンジャロのデータと、肥満症患者さんを対象にしたゼップバウンドやウゴービのデータでは、体重の減り方や食事量、患者さんの背景が異なります。
そのため、「マンジャロは何%、ウゴービは何%」と単純に数字だけを並べて比較することはできません。
抜け毛の原因として最も考えやすい「休止期脱毛」
マンジャロやウゴービを使った後に起こる抜け毛の多くは、「休止期脱毛」と呼ばれる状態に近いのではないかと考えられています。
髪の毛には、
伸び続ける成長期
成長が止まる退行期
休んで抜ける準備をする休止期
というサイクルがあります。
通常は、頭皮全体の一部の髪だけが休止期に入っています。しかし、急な体重減少、発熱、手術、強いストレス、過度な食事制限などがあると、成長期の髪が一斉に休止期へ移行することがあります。
その結果、しばらく時間が経ってから、頭全体の髪が一気に抜け始めます。
休止期脱毛は、原因となった出来事の直後に起こるとは限りません。一般的には、体重が減ったり食事量が減ったりしてから、2〜3か月ほど経って抜け毛が目立つことがあります。[参考:British Association of Dermatologists](https://www.bad.org.uk/pils/telogen-effluvium)
そのため、
「薬を始めてすぐではなく、数か月後に抜け毛が増えた」
ということも珍しくありません。
薬そのものが原因の可能性はないのか
薬そのものが毛根や毛周期に影響している可能性も、完全には否定できません。
2026年の総説では、セマグルチドやチルゼパチドで脱毛の報告が比較的多く、脱毛のタイプとしては休止期脱毛や男性型・女性型脱毛症が多かったとされています。
ただし、同じ総説でも、急激な体重減少や栄養不足が大きな要因になっている可能性が指摘されています。薬が直接毛根に作用したのか、体重減少を通じて間接的に起こったのかは、まだ明確に分かっていません。[Guptaら、2026年](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41998799/)
また、GLP-1関連薬の脱毛を扱った2025年の総説でも、報告は増えているものの、皮膚科医による診断が行われていない研究が多く、薬との因果関係は確定していないとされています。[Rojas Lopezら、2025年](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40951222/)
現時点で最も妥当な説明は、
薬によって食欲が落ちる
↓
食事量や体重が急に減る
↓
体が一時的なストレス状態になる
↓
数か月後に休止期脱毛が起こる
という流れです。
どのような抜け方なら休止期脱毛らしいのか
休止期脱毛では、円形脱毛症のように一部分だけが丸く抜けるというより、頭全体の髪が均等に減ったように感じることが多いです。
洗髪時やブラッシング時に抜け毛が増え、髪のボリュームが減ったように感じます。一方で、頭皮に赤み、強いかゆみ、湿疹、痛みなどは通常ありません。
ただし、次のような場合は、単なる休止期脱毛ではない可能性があります。
円形やまだらに抜ける
生え際や頭頂部が徐々に薄くなる
眉毛やまつ毛も抜ける
頭皮に赤み、かさぶた、痛みがある
6か月以上、抜け毛が改善しない
家族に男性型・女性型脱毛症が多い
休止期脱毛をきっかけに、それまで気づかなかったAGAや女性型脱毛症が目立つようになることもあります。
抜け毛を防ぐためにできること
急激に体重を落としすぎない
体重を早く落とすほどよい、とは限りません。
マンジャロやウゴービは、少ない量から始めて、体調を確認しながら増量する薬です。吐き気が強い、食事がほとんど取れない、体重が急に減っているという場合は、予定通りに増量せず、主治医に相談してください。
薬を早く増量することよりも、必要な栄養を取りながら無理なく続けることのほうが大切です。
たんぱく質を確保する
食欲が落ちると、肉、魚、卵、大豆製品などのたんぱく質が不足しやすくなります。
髪の毛は主にたんぱく質からできているため、食事量が減っているときほど、少量でもたんぱく質を意識して取るようにしてください。
毎食、卵、魚、肉、豆腐、納豆、ヨーグルトなどのいずれかを取り入れるとよいでしょう。
ただし、腎臓病などでたんぱく質の制限を受けている場合は、自己判断で増やさず、主治医の指示に従ってください。
鉄や亜鉛を自己判断で大量に飲まない
鉄や亜鉛の不足は、抜け毛に関係することがあります。
一方で、抜け毛があるからといって、鉄や亜鉛のサプリメントを全員が飲めばよいわけではありません。不足していない人が過剰に摂取すると、別の健康問題につながることがあります。
抜け毛が目立つ場合や、食事量がかなり減っている場合には、症状に応じて、
血算
フェリチン
血清鉄・鉄飽和度
甲状腺機能
亜鉛
ビタミンB12や葉酸
などを確認することがあります。
全員にすべての検査が必要という意味ではありません。月経量が多い方、極端な食事制限がある方、強い疲れがある方などでは、鉄欠乏の確認が特に重要になります。
ビオチンなどの「髪に良いサプリ」は慎重に
ビオチンや各種育毛サプリが宣伝されていますが、栄養不足がない人の休止期脱毛を確実に改善するという十分な証拠はありません。
まずは薬の量、体重減少のスピード、食事内容、鉄や甲状腺などの状態を確認することが先です。
抜け毛が起きたら、薬を中止すべきなのか
抜け毛だけで、すぐにマンジャロやウゴービを中止しなければならないとは限りません。
体重減少が落ち着き、食事や栄養状態が改善すると、自然に抜け毛が減っていくこともあります。
休止期脱毛では、抜け毛が落ち着いた後も、新しい髪が伸びて全体のボリュームが戻るまでには数か月かかります。多くの場合、髪が抜け始めてから3〜6か月程度で改善傾向が出ますが、元の密度に戻るまでにはさらに時間がかかることがあります。
ただし、抜け毛が非常に多い、体重が急激に減っている、食事がほとんど取れない、貧血や甲状腺の異常が疑われるという場合は、薬を続けるかどうかも含めて治療全体を見直す必要があります。
自己判断で中止したり、逆に症状を我慢して増量を続けたりせず、処方医に相談してください。
皮膚科を受診したほうがよいケース
次のような場合は、内科だけでなく皮膚科で頭皮や毛髪を確認してもらうと安心です。
円形やまだらに抜けている
生え際や頭頂部が薄くなっている
頭皮に赤みや炎症がある
眉毛やまつ毛も抜けている
抜け毛が6か月以上続いている
体重や食事が戻っても改善しない
家族にAGAや女性型脱毛症が多い
抜け毛には、休止期脱毛、AGA、女性型脱毛症、円形脱毛症、甲状腺疾患、鉄欠乏など、さまざまな原因があります。
「マンジャロを使っているから、すべて薬のせい」と決めつけるのではなく、ほかの原因がないかを確認することが大切です。
まとめ
マンジャロやウゴービを使用しているときに、抜け毛が増えることはあります。
ただし、現在の研究からは、次のように整理するのが適切です。
抜け毛は実際に報告されている
ウゴービでは臨床試験で脱毛が報告されている
マンジャロでは市販後に脱毛の報告があるが、発生率は明確ではない
薬が直接毛根を壊すと証明されたわけではない
急な体重減少、カロリー不足、たんぱく質や鉄の不足が大きく関係している可能性がある
多くは休止期脱毛という一時的なタイプと考えられる
体重と栄養状態が安定すると、自然に改善することが多い
ただし、AGAや甲状腺疾患、鉄欠乏などが隠れていることもある
抜け毛が増えると、薬を続けるのが怖くなるかもしれません。
しかし、必要以上に怖がる必要もありません。大切なのは、体重を急激に落としすぎないこと、食事を極端に減らさないこと、そして症状があれば早めに相談することです。
薬の効果だけでなく、体調、栄養状態、髪の変化も一緒に確認しながら、無理のないペースで治療を続けていきましょう。
※この記事は、マンジャロ、ウゴービなどGLP-1関連薬と抜け毛について、現在得られている情報をまとめたものです。抜け毛の原因は一人ひとり異なります。薬の中止や減量、サプリメントの使用については、自己判断せず主治医にご相談ください。
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