2020/03/03

健康講座199~インスリンポンプ療法CSII [continuous subcutaneous insulin infusion]への期待

こんにちは。

小川糖尿病内科クリニックです。

 1型糖尿病患者に対するインスリンポンプ療法は、インスリン頻回注射療法よりも心血管死のリスクが低いことが、デンマーク・オーフス大学のIsabelle Steineck氏らによる、スウェーデン人を対象とする長期的な検討で示された。糖尿病患者では、高血糖と低血糖の双方が心血管疾患(冠動脈心疾患、脳卒中)のリスク因子となるが、持続的皮下インスリン注射(インスリンポンプ療法)はインスリン頻回注射療法よりも、これらのエピソードが少なく、血糖コントロールが良好とされる。


 1型糖尿病患者は、インスリン分泌が枯渇しているため、インスリン投与が必須となる。現在では基礎インスリンとボーラスインスリンを組み合わせた、インスリン頻回注射療法[MDI:Multiple daily injections、(BBT [Basal-bolus treatment]ともいう)]を用いたインスリン強化療法が主流である。しかし、生理的インスリン補充のために必要となる基礎インスリンの調節は、MDIにおいては困難である。一方、インスリンポンプ療法(CSII [continuous subcutaneous insulin infusion]ともいう)は、自由に基礎インスリン量を調節できるために、MDIと比較して低血糖の少ない、より変動の少ない血糖コントロールが可能であるとされる。

 これまでに、血糖コントロール指標や低血糖の頻度などを両治療法において比較した報告は多数あるが、心血管イベントや総死亡などの真のアウトカム(true outcomes)を比較した報告はほとんどない。その結果、インスリンポンプ療法によりMDIと比較して、総死亡が27%減少することが示された。

 
 まず、本研究は観察研究であり、厳密には因果関係を証明することはできない。
 1型糖尿病患者における重症低血糖の頻度と、その後の心血管死との関連が報告されている1)

 
 インスリンポンプ療法の壁が小さいと考えられるスウェーデンにおいても、インスリンポンプ療法を行っている患者は全体のわずか13.4%であり、きわめて少ない。つまり、現実にはインスリンポンプ療法が継続できる患者とできない患者が存在しており、後者が大部分を占めている。

 インスリンポンプ療法の生理学的作用のみによる結果と単純に考えることはできず、インスリンポンプ療法が長期にわたって継続できることこそが、総死亡を含めた心血管イベントのリスク減少につながる可能性がある。

 今後はインスリンポンプ療法のについてさらなるデータの蓄積が必要そうです。

参考文献・参考サイトはこちら

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