2022/02/16

健康講座454 高血圧と大腸直腸がんリスク

みなさんどうもこんにちは。


小川糖尿病内科クリニックでございます。


 高血圧と大腸直腸がんリスクの関連を示唆するデータが報告されました。既知のリスク因子の影響を除外してもなお、有意性が維持されるということでございます。東京大学医学部附属病院循環器内科が、200万人以上の医療データを解析して明らかにしたものです。

 これまでの研究から、高血圧が大腸直腸がんのリスク上昇と関連する可能性が示されているようです。ただし、その関連を示した研究は、高血圧患者に肥満や糖尿病などの発がんリスク因子を有する人が多いことや、一部の降圧薬が発がんリスクに影響を与える可能性を考慮していないといった解釈上の限界があり、高血圧そのものと大腸直腸がんのリスクとの関連の有無は明らかになっていないとのことです。今回、対象を未治療の高血圧症例に絞り、肥満や糖尿病の影響を調整した上で大腸直腸がんリスクを検討したものとなります。

 研究の手法は、60以上の保険団体の健診および医療費請求データを解析するというものです。このデータベースでは、2005年1月~2018年8月に252万8,157人が、健診において血圧を測定されていました。20歳未満、降圧薬が処方されていた症例、大腸直腸がんや大腸直腸ポリープの既往症例、大腸直腸がんのリスク因子である炎症性腸疾患症例を除外した222万112例を解析対象としました。

 1,112±854日の追跡で6,899件の大腸直腸がん診断が記録され、検定により、ベースライン時の血圧が高い群ほど大腸直腸がんリスクが高いという有意な関連が認められたようです(P<0.001)。

 大腸直腸がん発症に関連する可能性のある因子〔年齢、性別、肥満、ウエスト周囲長、糖尿病、脂質異常症、心筋梗塞の既往、喫煙・飲酒・身体活動習慣、非健康的食習慣(朝食欠食、就寝前の摂食など)、アスピリンの処方〕を調整後、ベースライン時にステージ2高血圧だった群は大腸直腸がんリスクが有意に高いことが分かったのです〔ハザード比(HR)1.17(95%信頼区間1.08~1.28)〕。また、収縮期血圧が10mmHg高いごとに大腸直腸がんリスクは4%上昇し〔HR1.04(同1.02~1.06)〕、拡張期血圧が10mmHg高いごとに6%上昇する〔HR1.06(同1.03~1.09)〕という関係が認められたのでございます。

 なお、性別に検討すると、男性ではステージ2高血圧だけでなく、ステージ1高血圧でも有意なリスク上昇が認められた〔HR1.10(同1.00~1.20)〕。一方、女性は血圧カテゴリー別の検討では有意な関連が見られなかったが、拡張期血圧が10mmHg高いごとにリスクが4%上昇する〔HR1.04(同1.00~1.09)〕という関係が存在しました。

 血圧の上昇は既知の大腸直腸がんリスク因子を調整後にも、大腸直腸がんのリスク上昇と有意に関連しており、特に男性でその関連が強かったことがわかりました。血圧測定が大腸直腸がんハイリスク者の特定に役立つ可能性があります。

原著

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