2022/02/21

健康講座456 オミクロン株に対する新型コロナワクチン予防接種

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 現在、日本でも世界でもオミクロン株の猛威により急激な新型コロナウイルス感染症の感染者が増加しているような状況であります。米国や欧州の一部では感染拡大のピークを越え、収束傾向になっている地域もあるようですが、2022年1月中旬においてWHO(世界保健機関)でも各国の警戒を呼び掛けている状況です。


 本邦のコロナワクチン接種は2022年1月20日の時点で2回目接種終了者が全国民の約79%にあたる9,963万人を超えている状況だそうです。ただし2021年末から始まったコロナワクチンの3回目接種、いわゆるブースター接種は194万人(日本全国民の約1.5%)にとどまっており、2回目接種終了後から時間が経過した高齢者や基礎疾患を持つ者、新型コロナウイルスやCOVID-19症例と接触する機会の多い医療従事者はブースター接種を進めている最中です。

 コロナワクチンの3回目の接種、いわゆるブースター接種が日本でも粛々と進められています。一般的にワクチンの有効性、コロナの発症予防効果はデルタ株に比べてオミクロン株は低いとされているようです。さらにワクチン2回接種後の期間が長くなるとさらに効果が低下することがいわれており、接種直後はオミクロン株に対して約60%程度の発症予防効果を認めていたところ、5~6ヵ月が経過すると約10%に低下してしまうことが示されているとのことです。イスラエルの医療従事者に対するBNT162b2によるブースター接種の効果を検討した報告では、約1ヵ月の短い追跡期間ではあるものの、ブースター接種群はブースター非接種群に比べ90%以上もコロナ感染リスクを低下させる結果が示されました。この報告では症例の観察期間が2021年8~9月で行われており、オミクロン株が感染拡大する前の状況であることは注意が必要です。また先に示した英国からの報告では、ファイザー製コロナワクチンBNT162b2やモデルナ製コロナワクチンmRNA-1273のブースター接種後のオミクロン株に対する効果についても検討されており、BNT162b2では約70%、mRNA-1273では約80%まで発症予防効果が回復するとされました。

 米国からの中和抗体価を測定した研究ではコロナワクチン2回接種後3ヵ月以内では高い中和抗体価を示したが、6~12ヵ月経過すると大幅に低下してしまうことが示されているようです。またオミクロン株に対しては2回接種後3ヵ月以内でも50%以上の方で中和抗体が消失するような結果であり、野生株に対する中和抗体価と比較するとBNT162b2接種群で122倍低く、mRNA-1273接種群では43倍低い結果となったのです。この報告ではブースター接種での中和抗体価の上昇も検討されており、野生株やデルタ株のブースター接種による中和抗体価の上昇は1~9倍にとどまっていたのに対し、オミクロン株はBNT162b2接種群で27倍、mRNA-1273接種群で19倍中和抗体価が上昇することが示され、オミクロン株に対抗するためにブースター接種が極めて重要であることが示唆されたのです。

 イスラエルの論文は、BNT162b2を2回接種した約84万人を対象にブースター接種の効果を検証した報告があります。この研究の調査対象者は2021年8月調査開始時に年齢が50歳以上で、5ヵ月以上前に2回目接種を完了した方で、約2ヵ月間に3回目接種を受けたブースター接種群75万8,118例と非ブースター接種群8万5,090例で比較検討されました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡が主要評価項目とされ、ブースター接種群で65例(10万人あたり0.16人/日)、非ブースター接種群で137例(10万人あたり2.98人/日)という結果が示されました。背景因子や併存症による調整を行った後の両群のCOVID-19による死亡ハザード比は0.10であり、ブースター接種群では死亡率が90%低かったのです。65歳で区切った年齢や男女別でもブースター接種群がCOVID-19による死亡率が低かったです。また副次評価項目として規定された新型コロナ感染者もブースター接種群で2,888例、非ブースター接種群で1万1,108例であり、ブースター接種群で83%低かったのでございます。

 要するにですよ、過去にはブースター接種の有効性として発症予防効果や感染予防効果、そして中和抗体価を評価した報告が主であったが、本研究からはブースター接種が死亡率の低下を示すという心強い結果が出たということでありますよ。

 ただし本研究は50歳以上に限定した報告であり、50歳未満の若年者に当てはめることはできないことは注意は必要です。また解析期間は2021年8~9月の約2ヵ月間という短い時間での検討であることや、その時期には現在世界でも日本でも猛威を振るっているオミクロン株ではなく、B.1.617.2系統、いわゆるデルタ株がメインであったことは差し引いて解釈する必要があります。そして多くの方が懸念しているコロナワクチンの有害事象についての検討はなされておらず、今後のデータの集積は必要です。

 本邦でも全国民の約8割が2回目を接種完了している状況においては、今後の新型コロナウイルスとの戦いに打ち勝つためには変異ウイルスの違いはあれど、ブースター接種をいかに早く推し進めるかどうかにかかっているのではないでしょうか。オミクロン株の感染拡大で多くの医療機関で厳しい状況ですが、そのような大変な状況下でもできる限りワクチン接種体制を整備していくことが望まれる気がします。

(United Kingdom Health Security Agency, UKHSA 2021.12.31)
(United Kingdom Health Security Agency, UKHSA 2021.12.31)

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