2022/03/11

健康講座464 心不全と糖尿病薬

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 2型糖尿病患者において心不全による入院の直後にmetformin治療を開始することは、左室駆出率(LVEF)が40%超の場合にその後1年間の再入院の発生率低下と関連したようです。

代替としてSU薬を開始した群では、LVEFが40%超の場合には再入院の発生率は中立的でありやした。しかしLVEFが40%以下の場合は、SU薬非開始群と比較し再入院の発生率は48%有意に増加したのでありやした。

既存のエビデンスからですと、心不全に対してはSGLT2阻害薬が第一選択薬とされており、metforminはさらなる血糖降下が必要な場合に考慮されております。

循環器医の間でのコンセンサスは、駆出率が低下した心不全および保持された心不全のいずれの患者に対しても、血糖コントロールやmetformin治療とは独立に、SGLT2阻害薬を治療の柱の1つとすべきだ、というものもあります。

Get With the Guidelines-Heart Failureレジストリにおいて2006〜14年に収集されたデータが用いられました。同レジストリは、米国心臓協会がスポンサーを務め組織化したプログラムであり、現在米国の500超の病院が参加し12万5,000例超の患者が組み入れられているようでございます。

本試験では、心不全による入院後に退院し、2型糖尿病の既往または治療中と診断され血糖降下薬を1種類以上処方されている者が対象とされた。metforminが推奨されないeGFR 45mL/分/1.73m2未満の患者は除外されておりました。

最終的な試験コホートは5,852例となったようです。そのうち、入院中または退院後90日までにmetforminを開始したのは454例(8%)、同期間中にSU薬を開始したのは504例(9%)であったようです。

29の潜在的交絡因子で調整した解析では、metformin開始群における全死因死亡または心不全再入院の複合の12ヵ月間の発生率は、非開始群と比較し19%有意に低下したのでありやす。

再入院の発生率は、metformin開始群で非開始群と比較し20%低下したが、この差は統計学的有意差にわずかに届かなかったようでありやす(p=0.072)。全死因死亡の発生率は、metformin開始群と非開始群で同等だったようです。

初回入院中のLVEFで患者を層別化した解析では、LVEFが40%超の患者において、metformin使用が再入院発生率を42%有意に減少させ、再入院または全死因死亡の複合発生率の有意な32%の減少と関連したことが明らかになったのでございます(全患者のおよそ58%でLVEFが40%超)。

LVEF40%以下の患者では、metformin治療と3種類の主要アウトカムのいずれもが有意に関連しなかったことが示されました。

完全調整モデルにおいて、SU薬開始群では、非開始群と比較し3種類の主要アウトカムすべてでわずかに有意な増加が認められました。SU薬治療は、全死因死亡の24%の相対増加(p=0.045)、再入院の22%の相対増加(p=0.05)、再入院または全死因死亡の複合の17%の相対増加(p=0.047)と関連しました。

ベースラインのLVEFで層別化したところ、LVEFが40%以下の患者においてSU薬治療による有意差が認められました。LVEFが40%以下のSU薬開始群では、全死因死亡が29%増加しました。

本試験では、心不全による入院時にLVEFが40%以下であった患者ではmetforminのベネフィットが見られなかったことから、駆出率が低下した心不全という状況下での2型糖尿病に対するファーストライン治療として、metforminよりもSGLT2阻害薬を優先することを支持するデータがさらに加わったとも考えられます。

今回の試験においてSU薬による害が示唆されたことで、可能であれば心不全患者において別の血糖降下薬の使用を優先することが支持されるでしょう。

The study received no commercial funding. Get With the Guidelines-Heart Failure is sponsored in part by several drug companies. Greene has reported no relevant financial relationships. Cheng and McGuire have each received personal fees from numerous companies.

JACC Heart Fail. Published online December 8, 2021. Abstract

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