2022/05/11

健康講座490 新型コロナで糖尿病発症か

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患に伴い糖尿病の新規発症が増加することが報告されているようですが、その多くは一過性の糖代謝異常であることを示すデータが掲載されたようでございます。COVID-19罹患前から既に存在していた耐糖能異常が、炎症性ストレスの負荷によって悪化し一時的に糖尿病域の高血糖となり、それがCOVID-19治療中に発見されるというケースが多いのではないかとのことでございます。

 研究対象は、2020年3月1日~9月27日に三次医療機関であるマサチューセッツ総合病院に入院した18歳以上のCOVID-19患者1,902人。このうち594人(31.2%)が、入院中に糖尿病であることが確認されていました。この患者群を2021年7月まで追跡して、糖代謝レベルの変化を検討しました。なお、594人中77人(13.0%)は、過去に糖尿病と診断されていない新規発症者だったようです。

 まず、COVID-19入院以前から糖尿病を有していた患者と、入院中に新たに糖尿病と診断された患者を比較した結果を見ると、後者は若年であり(中央値64.03対54.12歳)、血糖値は低く(同184対143.5mg/dL)、炎症マーカーのCRPが高い(同74.8対128.5mg/dL)といった違いが認められたようです。

 次に、COVID-19の転帰を比較すると、新たに糖尿病と診断された患者は、入院期間が長く(同8対20日)、ICU入室率が高い(36.17対72.73%)という有意差が見られたのです。一方、インスリン治療を要した期間は、COVID-19罹患前から糖尿病を有していた患者の方が長かったようですが、死亡率は有意差がなかったとのことです。

 COVID-19入院中に新たに糖尿病と診断され、生存退院した64人のうち、中央値323日の追跡期間中、糖尿病域の高血糖が持続したのは36人(56.3%)であり、26人(40.6%)は正常域または境界域に寛解したようです。なお、糖尿病域の高血糖が持続していた36人のうち、追跡終了時点でインスリン療法を必要としていたのは5人だったようです。

 COVID-19罹患に伴い新たに診断される糖尿病の成因は、インスリン分泌細胞であるβ細胞の破壊ではなく、ストレスによる急性のインスリン抵抗性が主要なメカニズムだと考えられそうです。そのような成因で発症した糖尿病は、一般的に永続的なものでないと思われます。COVID-19罹患時に糖尿病を発症した患者は、COVID-19治癒後にもインスリンやその他の血糖降下薬が、長期間必要になるとは限らないようです。

0 件のコメント:

コメントを投稿

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...