2022/07/01

健康講座512 良質なたんぱく質

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

骨格筋の合成にはタンパク質(アミノ酸)が不可欠ですが、効率的に筋肉を合成するためにはタンパク質の1日の合計量だけではなく、朝・昼・夕での取り方にも気を付けることが大切であるようです。

古くから「朝食は金、昼食は銀、夕食は銅」と例えられてきたように、朝食は1日の中でも重要な食事であることはよく知られています。近年、身体機能や筋力維持の観点からも、朝食の意義に注目が集まっているようです。朝食のタンパク質摂取の重要性を示唆する研究論文では『夕食よりも朝食に多くのタンパク質を摂取するほうが骨格筋の合成効率が高くなる』という結果が示されています1)

PROT-AGE Study Group(高齢者のタンパク質必要量を検討するための欧州老年医学会参集の研究チーム)では、高齢者の骨格筋量と機能を維持するために毎食25g程度のタンパク質摂取が推奨されています2)。日本人の食事摂取基準2020年版のタンパク質目標量をみると、身体活動量がふつう(座って過ごすことが多いが、立ち仕事、通勤、買い物、家事、軽いスポーツなどを行う)の65~74歳の場合、男性は90~120g/日、女性は69~93g/日で、75歳以上の場合では男性は79~105g/日、女性は62~83g/日と示されており3)、これを朝~夕の3食へ均等に配分すると、1食あたり約20~40gになります。しかしながら、一般に1日の摂取量のうち朝食からの摂取が占める割合は20~25%とされています。さらに高齢者では、加齢に伴う食欲不振、口腔・消化・感覚器機能の低下、抑うつ傾向、収入や独居といった生活環境などの影響を受けて食事摂取量が減少しやすいため、朝食に十分量のタンパク質を取ることが難しい方が増えると考えられます。


食事中のタンパク質の生物価(生物学的利用能)を示す指標にアミノ酸スコアというものがあります。一般に「良質なタンパク質」とは、アミノ酸スコアの高い、すなわち生物学的利用能の高いタンパク質を指します(良質なタンパク質を含む食品:肉・魚・卵・大豆・牛乳/乳製品)。身体を合成するタンパク質は20種類のアミノ酸で構成されており、この中には、体内で合成できない9種の必須アミノ酸が含まれます。食品タンパク質の生物学的利用能は、食品タンパク質中の9種の必須アミノ酸含有バランスによって異なり、このバランスは、国際機関(FAO/WHO/UNU)によって定義された基準(アミノ酸評点パターン)によって評価されます。この評価において、タンパク質の生物学的利用能は、9種の必須アミノ酸のうち評点パターンに最も満たないアミノ酸によって制限されてしまうと考えられています。なかでも、小麦などの穀類はリジンが制限アミノ酸となり、アミノ酸スコアが低い、つまり生物学的利用能が低いことがよく知られています。すなわち、穀類に偏りがちな食生活では、タンパク質の生物学的利用能が低くなる可能性があるということです。反対に、制限アミノ酸を別の食材から補うことにより、生物学的利用能を高めることができます。

60歳以上の地域住民を対象とした最大9.2年間の追跡では、タンパク質の「質」が高い、すなわち生物学的利用能の高い朝食を取ると将来の筋力低下をきたしにくい可能性があるようです。

朝食のタンパク質摂取量がPROT-AGE Study Groupの推奨量25gを下回っている人ほど生物学的利用能の高い食事の重要性が示唆され、また、朝食のタンパク質摂取量が20g以上で生物学的利用能が低い集団と、朝食のタンパク質摂取量は20g未満でも生物学的利用能が高い集団とでは、後者のほうが筋力低下を発生しにくいことも示唆されました4)。これらのことから、1日の摂取量が低くなりやすい朝食ではとくに、タンパク質の「質」に留意することが大切と考えられます。このことは、摂取量が減少しやすい高齢者にとって重要な視点になるでしょう。

「良質なタンパク質」を含む食品には、前述に示したように肉・魚・卵・大豆・牛乳/乳製品があります。

しかしながら、忙しい朝に主菜・副菜を準備することが難しい場合もあるかと思います。日頃の料理の際に多めに調理して作り置きおかずとしてストックしておいたり、市販の冷凍食品などを適宜活用したりするのも工夫のひとつです。

調理を必要としない納豆とたまご、作り置きしておいた煮物を用いても、タンパク質の生物学的利用能の高い食事にすることができます。また、牛乳/乳製品の摂取もお勧めです。牛乳コップ1杯(180mL)を追加するとタンパク質が約6g増加し、1食あたりの摂取量25gを達成することができます。

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