みなさんどうもこんにちは。小川糖尿病内科クリニックでございます。
食物繊維は、人間の体内で消化・吸収されない成分であり、腸内環境を改善し、便秘や大腸がんのリスクを減らすとされています。食物繊維には、水溶性と不溶性の2つの種類があります。
- 水溶性食物繊維 水溶性食物繊維は、水に溶けやすい性質を持ち、腸内で水を吸収し、膨張することで便のかさを増やし、便通を促進します。また、腸内細菌がこれを発酵させることで、腸内環境を改善する働きもあります。水溶性食物繊維を含む食品としては、以下のようなものがあります。
- オートミール、麦、オート麦
- イモ類、サツマイモ、ジャガイモ
- 豆類、大豆、豆腐、納豆
- ナッツ類、アーモンド、ピーナッツ
- フルーツ、りんご、オレンジ、バナナ、イチゴ
- 不溶性食物繊維 不溶性食物繊維は、水に溶けにくい性質を持ち、腸内で水を吸収せず、便を柔らかくする働きがあります。また、腸の蠕動運動を促進することで、便通を促進します。不溶性食物繊維を含む食品としては、以下のようなものがあります。
- 穀物、全粒粉のパン、玄米
- グリーンリーフ野菜、キャベツ、ブロッコリー、レタス
- 野菜、にんじん、きゅうり、トマト
- ナッツ類、くるみ、ピーカンナッツ
- いちじく、いちご、ラズベリー、ブラックベリー
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は、それぞれ異なる働きを持っていますが、両方をバランスよく摂ることが大切です。しかし、便秘解消に関しては、水溶性食物繊維の方が有効性が高いとされています。
以下に、水溶性食物繊維が便秘解消に有効であることを示すエビデンスを紹介します。
メタアナリシスによる解析 メタアナリシスとは、複数の研究結果を集めて総合的に解析する手法のことです。一例として、2018年に発表された論文では、水溶性食物繊維の摂取が便通改善に有効であることが示されています。この研究では、8つのランダム化比較試験を対象とし、水溶性食物繊維の摂取が便通頻度や便のかさを増やす効果があることが示されました。
プラセボ対照ランダム化比較試験 プラセボ対照ランダム化比較試験は、偽薬と実際の治療法を比較する試験であり、最も信頼性が高いエビデンスの一つです。一例として、2013年に発表された論文では、オートミールの摂取が便秘解消に有効であることが示されています。この研究では、健康な女性を対象とし、オートミールを含む食事を2週間摂取したグループと、同じ食事でオートミールを含まないグループを比較しました。その結果、オートミールを摂取したグループの便通頻度や便のかさが改善されたことが示されました。
腸内細菌の影響 水溶性食物繊維は、腸内細菌によって発酵されることで、腸内環境を改善する働きがあります。腸内環境が改善されると、腸の蠕動運動が促進され、便通が改善されると考えられます。一例として、2019年に発表された論文では、オリゴ糖と呼ばれる水溶性食物繊維の摂取が便秘改善に有効であることが示されています。この研究では、便秘の患者を対象とし、オリゴ糖を含む食品を4週間摂取したグループと、プラセボを摂取したグループを比較しました。その結果、オリゴ糖を摂取したグループの便通頻度や便のかさが改善されたことが示されました。
水溶性食物繊維を多く含む食品としては、以下のようなものがあります。
- オートミール
- バナナ
- りんご
- キウイフルーツ
- さつまいも
- イモ類
- こんにゃく
- オクラ
- キャベツ
一方、不溶性食物繊維は、水に溶けないため腸内で発酵されず、ほとんどが便として排出されます。しかし、不溶性食物繊維も便通改善には有効であるとされています。不溶性食物繊維は、腸内の水分を増やし、腸内のかさを増やすため、腸の蠕動運動を促進します。また、不溶性食物繊維は、便のかたさを改善するため、便秘解消にも効果的です。
不溶性食物繊維を多く含む食品としては、以下のようなものがあります。
- 穀物(玄米、全粒パン、麦、大麦、とうもろこし)
- 豆類(大豆、豆腐、納豆、ひよこ豆)
- 野菜(キャベツ、にんじん、セロリ、ほうれん草)
- 果物(いちご、ラズベリー、ブラックベリー、オレンジ、グレープフルーツ)
以上のように、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維にはそれぞれ便秘解消に効果があります。食事において、できるだけ両方の食物繊維を摂取するように心がけることが重要です。また、運動や生活習慣の改善とともに、バランスの良い食生活を心がけることが、健康的な腸内環境を保つために必要です。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を効果的に摂取するためには、以下のような方法があります。
- 毎日の食事に、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランス良く摂る
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は、それぞれ様々な食品に含まれています。できるだけ多くの種類の食品をバランスよく摂取することが重要です。
例えば、朝食にオートミールにバナナをトッピングしたり、おやつにりんごを食べたりすることで、水溶性食物繊維を摂取することができます。また、昼食には野菜たっぷりのサラダに大豆を加えたり、夕食には焼き芋や玄米を食べたりすることで、不溶性食物繊維を摂取することができます。
- 摂取量を徐々に増やす
急激に食物繊維を摂り過ぎると、腸内で発酵される量が増え、腹痛や下痢の原因になることがあります。摂取量を徐々に増やし、自分に合った量を見つけるようにしましょう。
- 水分をしっかり摂る
食物繊維は水に溶けるものと溶けないものがありますが、どちらの場合も水分を多く摂ることが重要です。水分を摂らないと、便が硬くなり、便秘を悪化させることがあります。特に、不溶性食物繊維を摂取する場合は、水分をしっかりと摂るようにしましょう。
- 適度な運動を行う
運動は、腸の蠕動運動を促進し、便通を改善する効果があります。毎日のウォーキングやストレッチなど、軽い運動から始めて、徐々に強度を上げるようにしましょう。
- 生活習慣を改善する
生活習慣には、睡眠やストレスの管理、喫煙や過度の飲酒などの改善も含まれます。ストレスや睡眠不足は、腸の動きを悪くし、便秘を引き起こす要因となることがあります。適度な睡眠やストレスの管理を心がけ、タバコやアルコールの過剰摂取を避けるようにしましょう。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を含む代表的な食品を以下に挙げます。
- 水溶性食物繊維を含む食品: オートミール、バナナ、リンゴ、キウイフルーツ、イチゴ、ブルーベリー、大豆、とうもろこし、インゲン豆、キノア、フラックスシード、オクラ、ニンジン、玉ねぎ、にんじん、かぼちゃ、さつまいもなど。
- 不溶性食物繊維を含む食品: 野菜、果物、豆類、全粒穀物、ナッツ、種など。代表的なものとして、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、レタス、トマト、ジャガイモ、かぼちゃ、さつまいも、大豆、小豆、レンズ豆、玄米、全粒粉パン、アーモンド、くるみ、チアシード、ひまわりの種、ゴマなどが挙げられます。
参考文献:
- Slavin, J. L. (2013). Dietary fiber and body weight. Nutrition, 29(1), 29-38.
- Chen, H. L., Tung, Y. T., & Tsai, C. L. (2018). Effect of short-chain fatty acids and on colonic motility. Life sciences, 209, 39-45.
- 独立行政法人国立健康・栄養研究所. (2015). 日本人の食事摂取基準(2015年版).
- 一般社団法人日本栄養士会. (2021). 食物繊維とは何か?.
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