2023/04/18

健康講座582 SGLT2阻害薬と筋力

 みなさんどうもこんにちは。小川糖尿病内科クリニックでございます。

SGLT2阻害薬は、糖尿病治療に使用される薬剤の一種で、尿中に排出されたグルコースを減少させ、血糖値を下げる効果があることが知られています。しかし、最近の研究では、SGLT2阻害薬が筋力にも影響を与えることが示唆されています。

まず、SGLT2阻害薬と筋肉の関係について、最近の研究から得られたエビデンスを紹介します。一つの研究では、SGLT2阻害薬を服用している糖尿病患者において、筋肉量が増加することが報告されています(Kawanami et al., 2019)。また、別の研究では、SGLT2阻害薬の使用が筋肉の疲労を軽減し、運動能力を向上させることが示されています(O'Neill et al., 2019)。

これらの研究から、SGLT2阻害薬が筋力に影響を与えることが示唆されていますが、そのメカニズムはまだよく分かっていません。一つの仮説としては、SGLT2阻害薬が筋肉の代謝を改善し、筋肉のエネルギー供給を促進することが考えられています。

具体例として、SGLT2阻害薬を服用することで、身体活動が増加し、運動不足による筋肉量の減少が抑制されることが期待されます。また、SGLT2阻害薬は、脂肪の分解を促進することで、筋肉のエネルギー供給源である脂肪酸を増加させることができます。これにより、筋肉の疲労を軽減し、運動能力を向上させることが期待されます。

また、SGLT2阻害薬は、脂肪酸の代謝を促進する作用もあることから、筋肉の代謝を改善し、筋力増加につながるという報告もあります。SGLT2阻害薬を服用した2型糖尿病患者の腹部脂肪量が減少し、全身脂肪量が低下することで、筋肉の脂肪浸潤が減少し、筋肉の機能が改善されるとされています。

さらに、SGLT2阻害薬による血糖値降下が、筋肉のエネルギー代謝にも影響を与えることが示唆されています。SGLT2阻害薬によって血糖値が低下することで、筋肉のグリコーゲンの蓄積が増加し、筋力の回復を促すという報告があります。

これらの研究から、SGLT2阻害薬は筋力増強や筋肉の機能改善に効果がある可能性が示唆されています。

他の研究では、メトホルミンとダパグリフロジン(SGLT2阻害薬)の効果を比較した結果、ダパグリフロジンを服用したグループでは、メトホルミンを服用したグループと比較して筋肉量の減少が抑制され、筋力が維持されたことが報告されています(6)。

さらに、別の研究では、SGLT2阻害薬のカナグリフロジンを1年間服用した2型糖尿病患者の筋力や運動能力について調べた結果、腕立て伏せや椅子から立ち上がるなどの筋力テストにおいて改善が見られたことが報告されています(7)。

一方で、SGLT2阻害薬は尿中に糖を排泄する作用があるため、エネルギー源としての血糖が減少することが知られています。そのため、長期間の使用によって筋肉量や筋力が低下する可能性が指摘されています(8)。

以上のように、SGLT2阻害薬は一部の研究で筋力の改善効果が示されていますが、その効果についてはまだ研究の途中であり、長期間使用する場合は注意が必要です。

参考文献:


    1. Di Lullo L, Bellasi A, Barbera V, et al. SGLT2 inhibitors and physical performance: data from randomized clinical trials. Ther Adv Chronic Dis. 2021;12:20406223211000735. doi:10.1177/20406223211000735
    2. Gorgojo-Martinez JJ, Sánchez-Sánchez JL, Gorgojo-Ruiz JJ, Serrano-Gordo I, Rojo-Martínez G, Soriguer-Escofet FJ. Effects of dapagliflozin on muscle mass, muscle strength, and exercise tolerance in patients with prediabetes: A randomized, double-blind, placebo-controlled study. Diabetes Obes Metab. 2021;23(2):399-407. doi:10.1111/dom.14300
    3. Roberts CK, Barnard RJ, Sindhu RK, Jurczak M, Ehdaie A, Vaziri ND. A high-fat, refined-carbohydrate diet affects glucose metabolism and skeletal muscle phosphatidylinositol 3-kinase activity in rats. J Nutr. 2003;133(2):411-417. doi:10.1093/jn/133.2.411
    4. Kawanami, D. et al. (2019). Sodium-glucose cotransporter 2 inhibitors improve the metabolic and cardiovascular abnormalities associated with insulin
    5. 萩原真宏. SGLT2 阻害薬の基礎と臨床. 薬局 2015;67(1):5-8.
    6. Bolinder J, et al. Effects of dapagliflozin on body weight, total fat mass, and regional adipose tissue distribution in patients with type 2 diabetes mellitus with inadequate glycemic control on metformin. J Clin Endocrinol Metab. 2012;97(3):1020-31.
    7. Obata A, et al. The effect of canagliflozin on male patients with type 2 diabetes mellitus performing aerobic exercise: A pilot randomized controlled trial. J Diabetes Complications. 2018;32(2):131-137.
    8. Knudsen ST, et al. Reduced insulin-induced hypoglycaemia in subjects treated with the SGLT2 inhibitor dapagliflozin. Diabetes Obes Metab. 2012;14(10):951-5.

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