2023/06/28

健康講座707 "薬物療法の新視点:2型糖尿病治療薬セマグルチドがアルコール依存症に対する新たな希望となるか?"

こんにちは、小川糖尿病内科クリニックです。今日は、スウェーデンのヨーテボリ大学で最近行われたとても興味深い研究をお話ししたいと思います。

この研究では、2型糖尿病と肥満症の治療薬として既に用いられているGLP-1受容体作動薬「セマグルチド」が、驚くべき新たな可能性を示しています。それは、なんとアルコール依存症の治療に有効である可能性があるというものです。詳しくは、科学誌「eBioMedicine」に掲載された研究結果をご紹介します。

この研究では、アルコール依存症のラットモデルにセマグルチドを投与したところ、そのアルコール摂取量が半分に減少したのです。なお、この効果は雄も雌も同様でした。これは、セマグルチドが脳の側坐核領域に作用し、アルコールに誘発されるドーパミン分泌を抑制することで、アルコールへの渇望を低下させるというメカニズムによるものと考えられています。

セマグルチドがこのようにアルコール摂取への渇望を抑制することで、過体重・糖尿病・アルコール依存症という3つの問題を同時に抱える患者さんに対する新たな治療法となる可能性があります。さらに、セマグルチドは長時間作用型で、週に1回の注射だけで効果が期待でき、また経口服用タイプも開発されていることから、患者さんの負担も少ないと言えるでしょう。

しかしながら、この結果がヒトにも適用できるかどうかは、まだ確定的には言えません。今回の結果はあくまでラットモデルにおけるものであり、ヒトを対象とした臨床試験が必要です。ただ、以前にGLP-1に作用する糖尿病治療薬がアルコール摂取を減少させる効果を示したという報告もありますので、今後の臨床研究の進展に期待が寄せられます。

このように、セマグルチドは2型糖尿病や肥満症の治療だけでなく、アルコール依存症の治療にも有用である可能性が示唆されています。既存の治療法だけでは十分に効果が得られないアルコール依存症患者さんにとって、新たな治療選択肢となる可能性があるのは非常に喜ばしいニュースです。

以上、セマグルチドがアルコール依存症の治療に有用である可能性についての研究をご紹介しました。今後の臨床試験の結果が待たれますね。 

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