2024/03/06

健康講座821 「暖かい足元、健康な未来 - 糖尿病と足の動脈硬化(LEAD)への対策」

 「足の動脈硬化(LEAD:下肢動脈疾患)への理解と予防」は、特に寒い冬の時期に重要です。冬には血流が悪化しやすく、「足の冷え」や「足のむくみ」「しびれ」の問題が増えます。これらの症状は、足の血液の流れが低下していることが密接に関連しており、深刻な病気の兆候である場合もあります。そのため、これらの症状には注意が必要です。



「フットケアの日」にちなんで行われた「女性の足の悩みに関する調査」では、冬に足の悩みが多いこと、特に「冷え」や「かかとのヒビ割れ」が多いことが明らかにされました。この調査から、血流を良くすることが「冷え性の改善」や「むくみ改善」にどれだけ効果的であるかが分かります。

しかし、約3割の人が足のケアを全く行っていないという事実も明らかになりました。これは、足の健康に対する意識の向上が必要であることを示しています。

毛細血管は、酸素を運ぶ重要なルートであり、毛細血管のコンディションが整わないと、体の組織に十分な酸素が行き渡らなくなる可能性があります。これは、足の冷えや疲労感という症状につながり、血管の老化である動脈硬化の一歩手前の状況につながります。

足の動脈の病気で多い「末梢動脈疾患」(PAD)は、足の指先に向かって血液を送り、酸素と栄養を供給している足の動脈で、動脈が途中で狭くなったり詰まってしまう病状です。PADになると、しびれや痛み、悪化すると潰瘍ができたり、ひどい場合には壊死することもあります。全身の動脈硬化を伴うことも多く、心筋梗塞や脳梗塞に罹患する危険性が高まります。

PADは、ほとんど無症状のまま病気が進行し、いったん症状が出始めると完治が難しくなります。PADの病期としては、ます冷感やしびれが起こり、やがて「間欠性跛行」(しばらく歩くと痛みが出る、休むとまた歩ける、という症状)があらわれ、それが進行すると安静時にも疼痛が起こるようになります。

糖尿病患者で血糖コントロールが悪いと、動脈硬化が進みやすくなるだけでなく、とくに膝から下の動脈(下腿動脈)が詰まりやすくなります。血流の迂回路ができにくく、足部の虚血が進み重症化しやすいので、特に注意が必要です。

PADを予防・改善するためには、バランスの取れた食事や適度な運動を心がけ、禁煙に努めることが必要です。喫煙、糖尿病、高血圧、高脂血症、ストレス、肥満などの動脈硬化の危険因子をコントロールしていくことが求められます。

治療法は進歩しており、薬物治療と運動療法が行われることが多いです。間欠跛行の薬物治療では、血液をサラサラにする抗血小板薬を使い、病状の進行を抑え、ほかの部位の動脈の閉塞を予防する治療が行われます。運動療法では、医師の指導の下で1日30分以上の歩行訓練を週3回、3ヵ月以上続けると多くの場合で改善します。

薬物や運動療法でも症状が改善しない時は、途絶えた血流を再開させる血行再建術が行われます。血行再建術には、動脈硬化を起こした血管を内側から広げる血管内治療と、詰まった血管を迂回してその先の血管につなげるバイパス手術があります。

血管内治療では、カテーテルを通じて風船を膨らませ、血管を拡張させるバルーン治療や、ステントを血管内で広げて固定するステント治療があります。これらの治療は、ここ数年で飛躍的に技術や治療器具が進歩しており、これまでは治療不可能であった部位についても、治療の幅が拡がってきています。

PADは全身の血管疾患でありトータルケアが重要です。治療により症状が良くなるだけではなく、今後起こりうる血管疾患の予後も改善しうることが可能となります。

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