みなさんこんにちは。
今回は、近年世界的に急増している「若年者の2型糖尿病」について、国内外の最新研究と論文をもとに詳しくわかりやすく解説していきます。若年層における糖尿病の現状と課題、なぜ日本人は糖尿病になりやすいのか、そして予防の重要性についてまとめました。
世界で進む「若者の糖尿病」増加
かつて2型糖尿病は中高年や高齢者に多い病気とされていました。しかし近年、世界的に若者、特に20~30代の2型糖尿病が増加しています。
2024年7月に『Lancet Diabetes & Endocrinology』に掲載された研究では、世界の20〜39歳の2型糖尿病の有病率が、2013年の2.9%から2021年には3.8%へと増加していることが報告されました。この増加傾向は先進国だけでなく、新興国を含む多くの地域で見られています。
この現象について、研究者たちは「若年者の糖尿病は今後40年間でさらに増加すると予測される」と警告しており、小児やティーンエイジャーを対象にした早期からの対策の必要性が叫ばれています。
若年発症の2型糖尿病の特徴とリスク
若くして2型糖尿病を発症した人は、年齢を重ねてから発症する人に比べ、インスリンが効きにくい「インスリン抵抗性」が強く、インスリンを分泌する膵β細胞の機能低下も早期に起こる傾向があるとされています。これは合併症が早く進行しやすいことを意味します。
実際に、国際調査グループの報告によると、30歳で2型糖尿病と診断された人は、糖尿病のない人に比べて平均して寿命が14年短くなるというショッキングな結果も明らかになっています(Lancet Diabetes & Endocrinology, 2024年10月号)。
米国における将来予測と大規模研究
米国疾病予防管理センター(CDC)の2024年5月の報告では、現在の発症率上昇のまま推移した場合、2060年までに20歳未満の若年者における2型糖尿病の患者数が70%増加すると予測されています。
ただし、研究では「2型糖尿病の年間発症率を2%減らす」ことができれば、発症数を52.6万人から29.4万人にまで抑制できる可能性があるとも報告されています(SEARCH for Diabetes in Youth Study, 2022)。
この流れを受けて、米国国立衛生研究所(NIH)は、9〜14歳の子ども3,600人を対象とした前向き追跡調査を開始しました。HbA1c(ヘモグロビンA1c)が高めの児童・思春期の若者を対象に、多様な人種・社会経済的背景のもとで、遺伝的・環境的要因と糖尿病発症リスクの関係を長期的に評価するものです(NIH, 2024年10月9日発表)。
日本人は糖尿病になりやすい?
日本人は欧米人に比べて肥満率が低く、エネルギー摂取量も少ない傾向がありますが、それでも2型糖尿病の発症率は決して低くありません。これは、日本人が遺伝的に糖尿病になりやすい体質を持っているためと考えられています。
日本人の多くは、インスリンの分泌能力が欧米人よりも低いため、少しの運動不足や体重増加でも高血糖状態に陥りやすくなります。
文部科学省や国立成育医療研究センターの調査でも、小児期の肥満傾向が年々高まっており、将来的な糖尿病リスクの増加が懸念されています。
すでに8歳で糖尿病のリスクサインが?
英ブリストル大学の研究(Diabetes Care, 2020年)によれば、成人期に2型糖尿病を発症するリスクは、8歳の時点ですでに代謝異常として現れている可能性があるとされています。
4,761人の子どもを対象に、8歳・16歳・18歳・25歳のときの血液データを用いて調査が行われ、2型糖尿病の遺伝的リスクスコアが代謝に与える影響が詳細に解析されました。
この研究は、「糖尿病は高齢者の病気ではなく、幼少期からの生活習慣の影響を受ける疾患である」という認識の重要性を示唆しています。
2型糖尿病は1型より合併症リスクが高い?
コロラド大学の研究(JAMA, 2017年)によれば、思春期に2型糖尿病を発症した若者は、同年代で1型糖尿病を発症した若者に比べて、合併症のリスクが著しく高いことが分かっています。
「SEARCH研究」における10代の若者を追跡したところ、2型糖尿病患者の約75%が、網膜症、腎症、神経障害、高血圧、動脈硬化など、いずれかの合併症を発症していました。一方で、早期からインスリン治療を受けていた1型糖尿病患者では、合併症の発症率ははるかに低いものでした。
この違いは、発症原因の違いに由来しています。
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1型糖尿病:自己免疫が原因。インスリン分泌がほぼゼロになり、インスリン注射が必須。
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2型糖尿病:生活習慣が主因。発症初期は症状が出にくく、治療が遅れやすい。
生活スタイルの見直しが最大の予防策
若年発症の糖尿病リスクを抑えるためには、何よりも生活スタイルの見直しが不可欠です。
【食事の改善】
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加工食品、糖分・脂肪分の多い食事の制限
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食物繊維の多い野菜、豆類、海藻、玄米などを積極的に摂取
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高カロリーな清涼飲料水を避け、水やお茶へ
【運動習慣の確立】
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外遊びや部活動、家族でのウォーキングなど、1日30分以上の身体活動を目標に
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テレビやゲーム、スマホに偏った「座りっぱなし」の生活を減らす
【健康チェックの導入】
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小児期・思春期の定期的な血糖チェック(HbA1c)
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家族歴がある場合は医療機関での早期相談
社会全体で取り組むべき課題
糖尿病の若年化は、個人の努力だけでは防げません。社会・学校・家庭・医療のすべてが一丸となって取り組む必要があります。
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学校:栄養教育・運動習慣・給食の質向上
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家庭:日常的な食育・体重管理
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医療:早期診断体制の整備、地域包括ケアの導入
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政策:食品表示の明確化、加工食品への課税など
結論:若者の糖尿病対策は未来の投資
糖尿病は「高齢者の病気」ではありません。現代の子どもたちの病気でもあるのです。
しかし、生活スタイルの見直しや定期的な健康チェックを通じて、予防・早期発見が可能です。医療の進歩と社会の連携により、未来の健康リスクを大きく軽減することができるのです。
将来の健康は、子どものうちからの生活習慣でつくられる。
今、この瞬間の取り組みが、10年後・20年後の未来を変えていきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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