皆さんこんにちは。
今回は、2025年6月に発表された注目の研究
「GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬が2型糖尿病患者の下肢切断に与える影響の違い」
について、わかりやすく解説します。
🌟この研究の目的
糖尿病の方は、**足の潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ)**から最悪の場合、**足を切断(下肢切断:LEA)**するリスクがあります。
この研究では、「GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)」と「SGLT2阻害薬(SGLT2i)」という2種類の糖尿病治療薬が、足の切断リスクにどんな違いがあるかを調べました。
🧪使われたデータと方法
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アメリカの大規模な電子カルテデータベース(TriNetX)を利用。
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2013年5月〜2025年3月の間にGLP-1RAかSGLT2iを始めた2型糖尿病の成人患者が対象。
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約18万人ずつ、合計約36万人分のデータを使用。
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年齢や合併症、薬の内容などができるだけ似ている人どうしを1対1で比較(傾向スコアマッチング)。
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観察期間は最大3年間。
💊GLP-1受容体作動薬とは?
GLP-1とは、腸から分泌されるホルモンで、インスリンの分泌を助ける働きがあります。
GLP-1受容体作動薬は、このホルモンの働きをまねて、血糖値を下げる薬です。
例:オゼンピック、ビクトーザなど。
📝特徴
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食欲抑制 → 体重減少にも効果あり
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血糖コントロールを改善
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心血管病リスクを下げることが報告されている
💧SGLT2阻害薬とは?
SGLT2は、腎臓でブドウ糖を再吸収する働きをするたんぱく質。
SGLT2阻害薬はこの働きをブロックして、尿からブドウ糖を出すことで血糖値を下げる薬です。
例:ジャディアンス、フォシーガなど。
📝特徴
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心不全や腎臓病に良い影響がある
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血糖コントロールと体重減少にも効果あり
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ただし、脱水や尿路感染のリスクがある
📊結果まとめ
✅主な結果(3年間の観察)
| 結果 | GLP-1RA群 | SGLT2i群 | P値(差の有意性) |
|---|---|---|---|
| 大切断なしの生存率 | 99.69% | 99.64% | 0.001(有意) |
| 大きな下肢切断のリスク | 23%低い(HR 0.77) | - | 有意 |
| 小さな下肢切断のリスク | 27%低い(HR 0.73) | - | 有意 |
| 糖尿病足潰瘍のリスク | 8%低い(HR 0.92) | - | 有意 |
| 死亡率 | 34%低い(HR 0.66) | - | 有意 |
※HR(ハザード比):1より小さいほどリスクが低いという意味
👣特に注目すべきグループ
GLP-1RAによる切断リスクの低下は、以下のようなリスクの高い人たちでも顕著でした。
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**末梢動脈疾患(PAD)**がある人 → HR 0.68(32%低下)
※PADとは、足の血管が狭くなり血流が悪くなる病気です -
**糖尿病足潰瘍(DFU)**がある人 → HR 0.70(30%低下)
💡研究の意義と今後
この研究は、過去にリアルワールドのデータを用いた最大規模の比較研究の一つです。
GLP-1RAは、足の切断を防ぐ可能性がある薬として注目される結果となりました。
ただし、これは観察研究なので、「因果関係」までは証明できない点に注意が必要です。
今後は、ランダム化比較試験(RCT)などの前向き研究で、さらに検証することが求められます。
📝まとめ
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GLP-1RAは、SGLT2iと比べて、足の切断や死亡のリスクがより低かった。
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特に、足の血流障害や潰瘍があるリスクの高い人では、効果が大きかった。
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将来的に、糖尿病患者の治療薬選択において、足のリスクを減らす目的でGLP-1RAが推奨される可能性があります。
最後まで読んでいただきありがとうございます😊
糖尿病治療薬の選択は、血糖値だけでなく「その人の全身の状態」によっても変わってきます。
かかりつけ医と相談しながら、自分に合った治療法を選びましょうね。
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