2026/02/23

健康診断978 肝臓だけの病気じゃない ― MASLD・MASH と「CKMスペクトラム」が示す“全身医療”への大転換

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こんにちは。
今日は、肝臓・心臓・腎臓・代謝をひとまとめに考える、かなり重要な最新レビュー論文

「MASLD, MASH, and the CKM Spectrum: A Roadmap for Multiorgan Clinical Trial Design」

の内容を、
医療者でなくても読めるレベルまで噛み砕いて解説します。

結論から言うと、この論文が伝えているメッセージはとてもシンプルです。

脂肪肝は“肝臓の病気”ではなく、全身の病気である。
そして、これからの治療研究は“臓器別”ではなく“人間まるごと”で考えるべきだ。


まず用語から(ここが一番大事)

今回の論文には専門用語が多いので、最初に整理します。


● MASLD(マスルド)

Metabolic dysfunction–Associated Steatotic Liver Disease

日本語では:

👉 代謝異常関連脂肪性肝疾患

ざっくり言うと:

  • 肥満

  • 糖尿病

  • 脂質異常症

  • 高血圧

こうした代謝異常を背景に起こる脂肪肝の総称です。

以前は NAFLD(非アルコール性脂肪肝)と呼ばれていましたが、

「お酒を飲まない」より
「代謝の問題」が本質だよね?

という流れで MASLD に名称変更されました。


● MASH(マッシュ)

Metabolic dysfunction–Associated SteatoHepatitis

👉 MASLD が悪化して、

  • 炎症

  • 肝細胞障害

  • 線維化

まで進んだ状態。

昔でいう NASH に相当します。

つまり:

MASLD(脂肪肝)

MASH(脂肪肝炎)

というイメージです。


● CKM スペクトラム

CKM とは:

  • C:Cardiovascular(心血管)

  • K:Kidney(腎臓)

  • M:Metabolic(代謝)

心臓・腎臓・代謝を一体として考える新しい枠組みです。

ここに今回、

肝臓も正式に仲間入りさせるべきでは?

というのが論文の核心です。


なぜ肝臓を CKM に入れるべきなのか?

理由は単純です。


① ほぼ必ず一緒に存在する

MASLD の人を調べると:

  • 心不全

  • 慢性腎臓病

  • 糖尿病

高確率で合併しています。

逆も同じ。

CKM の患者さんを調べると
かなりの割合で脂肪肝があります。


② メカニズムが共通

論文では、共通の病態として次の3つを挙げています。


● 全身性炎症

脂肪組織や肝臓から炎症性サイトカインが出る
→ 血管も心臓も腎臓も傷む


● リポトキシシティ(脂肪毒性)

余った脂肪が:

  • 肝臓

  • 心筋

  • 腎臓

に沈着して細胞障害を起こす。


● 線維化リモデリング

慢性炎症の結果、

  • 肝線維化

  • 心筋線維化

  • 腎線維化

が同時進行。

つまり:

同じ火事が、複数の臓器で同時に燃えている

という状態です。


現在の臨床試験の問題点

ここが論文の“痛いところ”。


❌ 心不全試験 → 肝臓を見ていない

❌ 腎臓試験 → 肝臓を除外

❌ MASH試験 → 心腎アウトカムを評価しない

つまり:

みんな自分の臓器しか見ていない。

その結果、

  • 心臓には効いたけど肝臓は?

  • 肝臓は改善したけど腎臓は?

という“空白地帯”が大量に残っています。


しかも肝臓試験は未だに「生検」中心

MASH の治験では、

  • 肝生検(針を刺して組織を取る)

がゴールドスタンダード。

これ、

  • 痛い

  • リスクある

  • 何度もできない

  • 患者さんが参加しにくい

という大問題があります。


そこで提案されている未来型デザイン

論文はかなり実践的な提案をしています。


✅ 最初から「多臓器患者」を組み込む

糖尿病+CKD+脂肪肝
のような人を“除外”せず“主役”に。


✅ 非侵襲的指標を使う

例:

  • MRI-PDFF(肝脂肪量)

  • FibroScan

  • 血液バイオマーカー

で評価し、生検を減らす。


✅ バイオマーカー+画像のサブ解析

炎症マーカー
線維化マーカー
心エコー
腎機能

を同時に追跡。


✅ バスケット型・プラットフォーム試験

これが一番未来的。


● バスケット試験

「病名」ではなく

👉 病態(例:線維化)

で患者を集める。

肝でも心でも腎でも
“線維化がある人”を一括評価。


● プラットフォーム試験

1つの巨大プロトコルの中で:

  • 薬A

  • 薬B

  • 薬C

を柔軟に入れ替えながら検証。

まるで OS のような治験。


この論文が示す本質

とても哲学的ですが、大事なので。


これまで:

❌ 肝臓は肝臓
❌ 心臓は心臓
❌ 腎臓は腎臓

これから:

✅ 「ひとりの人間」


MASLD/MASH は

「肝臓の問題」ではなく
CKM に組み込まれるべき全身疾患

という認識へのパラダイムシフトです。


医療者として、そして患者さんとして

この考え方は、

  • 糖尿病診療

  • 脂肪肝フォロー

  • 心不全管理

すべてに影響します。

単一臓器の数値改善ではなく、

その人の人生予後をどう良くするか

がゴール。


最後に超シンプルまとめ

🌱 脂肪肝は全身病
🌱 心・腎・代謝と深くつながっている
🌱 今の治験は分断されすぎ
🌱 これからは多臓器統合型医療
🌱 人を中心にした研究へ



お疲れさまでした。
ここまで読んでくださってありがとうございます。

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