2026/09/27

健康講座1077 GLP-1薬で体重は減った。でも、筋肉まで減っていない? マンジャロ・ウゴービで筋肉を守る「MEALメソッド」と、これからの治療

 



マンジャロやウゴービを使い始めると、体重は順調に減っていきます。

けれど、しばらくすると、こんな変化に気づく人もいます。

「体重は減ったのに、なんとなく体がだるい」

「階段が少しつらくなった」

「食べられないのはうれしいけれど、これで本当に大丈夫なのか」

GLP-1薬による減量では、脂肪だけでなく、筋肉を含む“脂肪以外の組織”も減ることがあります。だから、体重計の数字だけを見ていれば十分、とはいえません。

大切なのは、体重を落としながら、できるだけ筋肉と体力を残すことです。

この記事では、GLP-1薬で筋肉が減りやすくなる理由、今すぐできる対策としての「MEALメソッド」、そして将来の治療薬として研究されているビマグルマブについて、できるだけわかりやすく説明します。

体重が減るとき、減っているのは脂肪だけではない

GLP-1薬は、食欲を抑え、食事の量を減らします。体重が減るという意味では、とても強力な薬です。

ただし、体重が減るときに減るのは、脂肪だけではありません。

筋肉、骨、内臓、水分など、脂肪以外の体重をまとめて「除脂肪体重」と呼びます。名前は難しいのですが、簡単にいえば「脂肪ではない体重」のことです。その中心になるのが筋肉です。

減量では、減った体重の25〜40%程度が除脂肪組織の減少になることがあると報告されています。ただし、これは「減った体重の25〜40%が純粋な筋肉だった」という意味ではありません。筋肉以外の組織も含んだ数字です。

それでも、筋肉が減る可能性は軽く考えないほうがよいでしょう。筋肉が減ると、歩く、階段を上る、椅子から立ち上がる、荷物を持つといった日常動作に影響します。また、筋肉は血糖を取り込む重要な場所でもあるため、筋肉量や活動量の低下は、代謝にも関係します。

なぜGLP-1薬で筋肉が減りやすくなるのか

GLP-1薬が筋肉を直接壊す薬だから、と単純に考える必要はありません。

大きな理由は、食事量が減ることです。食べる量が少なくなると、カロリーだけでなく、筋肉をつくる材料であるたんぱく質も不足しやすくなります。エネルギーが足りない状態が続けば、体は筋肉を分解してエネルギーに使うことがあります。

さらに、吐き気や下痢があると、食事も水分も十分に取れません。体がだるくなって動かなくなれば、筋肉に与えられる刺激も減ります。

つまり、筋肉が減る背景には、薬そのものだけでなく、食事量の減少、たんぱく質不足、エネルギー不足、副作用、運動量の低下などが重なっています。

逆にいえば、ここを一つずつ整えていけば、筋肉を守る余地があります。

今すぐできる「MEALメソッド」

GLP-1薬を使いながら筋肉と栄養を守る考え方として、MEALメソッドが紹介されています。

MEALは、Muscle、Energy、Adverse effects、Liquidの頭文字です。日本語にすると、「筋肉」「エネルギー」「副作用」「水分」の4つを意識する方法です。

M:Muscle――まず、たんぱく質を守る

食欲が落ちているときは、食事全体の量が減ります。そのとき、最初に不足しやすいものの一つがたんぱく質です。

肉、魚、卵、乳製品、大豆製品などを、毎食少しずつでも取り入れます。一度にまとめて食べるより、朝・昼・夕の食事に分けるほうが、食欲が少ない人には実践しやすいでしょう。

たとえば、卵1個にはたんぱく質が約6g、木綿豆腐150gには約10g、魚や鶏肉100gにはおよそ20g前後のたんぱく質が含まれます。食事量が少ないときは、「主食を全部食べる」ことよりも、「たんぱく質を少しでも確保する」ことを優先すると考えるとわかりやすくなります。

MEALメソッドでは、たんぱく質を体重1kgあたり1.0〜1.5g程度とする目安が示されています。体重60kgなら、1日60〜90gという計算です。

ただし、これは全員にそのまま当てはまる固定の答えではありません。腎臓の機能が低下している方、高齢の方、持病がある方では、必要量や安全な量が変わります。自己判断で急に増やさず、医師や管理栄養士に相談してください。

E:Energy――極端なカロリー制限を避ける

GLP-1薬を使うと、食欲がなくなり、「食べなくても平気」と感じることがあります。

しかし、食事が極端に少ない状態が続くと、脂肪だけでなく筋肉も減りやすくなります。体重を早く落とすことが、必ずしも良い減量とは限りません。

食欲がなくても、たんぱく質だけでなく、必要なエネルギーも最低限は確保する。これが筋肉を守るうえで重要です。

何日もほとんど食べられない、体重が急激に落ちる、立ちくらみや強いだるさがあるという場合は、我慢して続けるのではなく、処方した医師に相談してください。

A:Adverse effects――吐き気や下痢を放置しない

吐き気や胃もたれがあるときは、一度にたくさん食べるより、少量を何回かに分けるほうが負担を減らせます。揚げ物や脂肪の多い料理は、胃から食べ物が出ていく速度をさらに遅くして、吐き気を悪化させることがあります。

食後すぐに横にならず、しばらく上半身を起こしておくことも一つの工夫です。

ただし、吐き気や下痢が続いて、食事や水分がほとんど取れない場合は、生活の工夫だけで解決しようとしないでください。薬の量や増量の時期を見直す必要があることもあります。

L:Liquid――水分を確保する

食事量が減ると、食事から入る水分も減ります。吐き気、嘔吐、下痢があれば、さらに脱水しやすくなります。

こまめに水分を取ることは大切ですが、「全員が1日2〜3L飲めばよい」と単純に決めることはできません。体格、季節、運動量、発汗量、腎臓や心臓の状態によって適量は変わります。

特に心不全や腎臓病などで水分制限を受けている方は、自己判断で水分量を増やさないでください。尿量が少ない、強い口渇、めまい、動悸などがあるときは、脱水の可能性も含めて医療機関に相談します。

筋肉を守るには、運動も必要

「薬を使っているから、運動をしなくても痩せられる」と考えてしまう人もいます。

しかし、薬が食欲を抑えてくれても、筋肉に「使う必要がある」と伝えることまではしてくれません。

歩くことは大切です。目安として、週150分程度の中等度の有酸素運動が紹介されることもあります。ただ、筋肉を守るには、歩行だけでなく、筋肉に負荷をかける運動も組み合わせたいところです。

スクワット、椅子からの立ち座り、かかと上げ、壁を使った腕立て伏せなど、自分の体重を使った運動から始めても構いません。週2〜3回が一つの目安ですが、最初から完璧にこなす必要はありません。

大切なのは、きつい運動を一度だけ行うことではなく、無理なく続けることです。

体重以外に、何を見ればよいのか

筋肉が減っているかどうかを、家庭の体重計だけで正確に判断することはできません。

そこで、体重と一緒に、いくつかの変化を見ます。

以前より階段がつらくなっていないか。椅子から立ち上がりにくくなっていないか。歩く速度が落ちていないか。食事が極端に少なくなっていないか。体重が減る一方で、だるさや力の入りにくさが出ていないか。

体重が減っているのに体力が落ちている場合、単純に「順調に痩せている」とは判断しないほうがよいでしょう。

ビマグルマブという、これからの筋肉対策

現在は、たんぱく質と運動によって筋肉を守ることが基本です。一方、将来の治療薬として研究されているのが、ビマグルマブです。

ビマグルマブは、アクチビンII型受容体という場所に作用する抗体薬です。専門用語を使わずに説明すると、筋肉の成長にかかっているブレーキの一部を弱める薬です。

GLP-1薬は、主に食欲を抑えて食事量を減らします。ビマグルマブは、それとは違う場所に働きかけ、脂肪を減らしながら筋肉を保つ方向に作用することが期待されています。

2026年にNature Medicine誌で報告されたBELIEVE試験では、肥満のある成人507人を対象に、ビマグルマブ、セマグルチド、両者の組み合わせなどを48週間比較しました。

高用量の組み合わせでは、48週時点の体重減少が17.8kgで、セマグルチド2.4mg単独の14.2kgより大きくなりました。さらに、組み合わせ群では、体重が減ったときの除脂肪体重の減少が、セマグルチド単独より小さい方向の結果が示されました。

つまり、単に体重を大きく落とすだけでなく、「脂肪を中心に落とし、筋肉をできるだけ残す」という減量が、薬の組み合わせによって実現できる可能性が示されたわけです。

ただし、ビマグルマブはまだ研究段階の薬です。試験では点滴で投与され、筋肉のけいれん、下痢、にきびなどの副作用も報告されています。日本で一般診療に使える承認薬でもありません。

この研究はとても興味深いものですが、「新薬が出るまで筋肉対策を待てばよい」という意味ではありません。今できるMEALメソッドと運動こそが、現時点での基本です。

まとめ――目標は「軽くなること」ではなく「弱らずに痩せること」

GLP-1薬は、体重を減らすための強力な治療です。

しかし、体重が減れば、それだけで治療が成功したとは限りません。脂肪が減っているのか、筋肉や体力まで失っていないかを見ていく必要があります。

そのために、まず取り組みたいのが、MEALメソッドです。

筋肉を守るためにたんぱく質を確保する。極端に食事を減らさない。吐き気や下痢を我慢しない。水分を適切に取る。そして、無理のない筋力運動を続ける。

将来的には、ビマグルマブのように、脂肪を落としながら筋肉を守る薬が治療に加わる可能性もあります。

けれど、今の段階でいちばん大切な問いは、「何kg減ったか」ではありません。

「脂肪は減ったか」

「筋肉と体力は残っているか」

「薬をやめたあとも続けられる習慣が身についているか」

GLP-1治療は、体重を軽くするだけの治療から、体を弱らせずに健康を取り戻す治療へと、少しずつ考え方が変わってきています。

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