2022/12/23

健康講座564 降圧薬飲むタイミング

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 降圧薬の服用は朝(6~10時)でも就寝前(20~24時)でも、主要心血管アウトカムは同等であることが、英国・ダンディー大学による前向き無作為化非盲検試験「TIME(Treatment in Morning versus Evening)試験」の結果示されました。

 TIME試験は、18歳以上の高血圧症で、降圧薬1種以上を服用する患者を対象に、英国で行われたプラグマティックな前向き分散型並行群間比較試験。研究グループは被験者を無作為に1対1の割合で2群に分け(制限、層別化、最小化はいずれもなし)、一方の群は服用中のすべての通常降圧治療薬を朝(6~10時)に、もう一方の群は就寝前(20~24時)に、それぞれ服用した。

 被験者は、複合主要エンドポイント(血管死、非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中による入院)について追跡調査を受けた。エンドポイントは、被験者報告またはlinkage to National Health Serviceデータセットによって特定され、治療割り付けをマスクされた委員会によって評価された。

 2011年12月17日~2018年6月5日に、2万4,610例がスクリーニングを受け、2万1,104例が就寝前服用群(1万503例)、朝服用群(1万601例)に無作為に割り付けられた。試験開始時の平均年齢は65.1歳(SD 9.3)、男性1万2,136例(57.5%)、女性8,968例(42.5%)であり、白人が1万9,101例(90.5%)、黒人、アフリカ系、カリブ系、英国系黒人が98例(0.5%)だった。1,637例(7.8%)は人種不明。心血管疾患既往者は2,725例(13.0%)だった。

 主要エンドポイントの発生は、就寝前服用群3.4%(362例、100患者年当たり0.69件[95%信頼区間[CI]:0.62~0.76])、朝服用群3.7%(390例、0.72件[0.65~0.79])で、両群で同等だった(補正前ハザード比[HR]:0.95、95%CI:0.83~1.10、p=0.53)。
 先行研究では、降圧薬の服用は就寝前が朝よりもアウトカムが良好の可能性が示唆されていました。TIME試験は高血圧患者における通常降圧治療薬の就寝前服用が、朝の服用と比べて主要心血管アウトカムを改善するかどうかを検討する目的で行われ、都合の良い時間に定期的に服用可能であることをアドバイスできそうです。

 原著

2022/12/16

健康講座563 Long COVID(新型コロナウイルス感染症[COVID-19]の罹患後症状、いわゆる後遺症

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 2020年および2021年に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した症候性患者において、Long COVID(新型コロナウイルス感染症[COVID-19]の罹患後症状、いわゆる後遺症)の主要な症状クラスター(身体的痛みや気分変動を伴う持続性疲労、認知に関する問題、持続する呼吸器症状)のいずれかを有する割合は全体で6.2%と推定され、女性および入院を要したSARS-CoV-2初感染者で高いことが、米国・ワシントン大学世界疾病負担研究(Global Burden of Disease)Long COVID Collaboratorsの解析で明らかとなったようです。2021年10月、世界保健機関(WHO)は、SARS-CoV-2感染から3ヵ月経過後も認められる、少なくとも2ヵ月以上持続し他の診断では説明がつかない症状として、「post COVID-19 condition」の定義を発表しました。しばしば「Long COVID」と呼ばれるこれらの症状について、これまでの研究では個々の症状や症状数に関する報告が最も多く、症状の持続期間や重症度、重複症状に関する報告は少なかったようでございます。

2020年3月~2022年1月の症候性SARS-CoV-2感染者約120万人のデータを解析

 研究グループは世界疾病負担研究の一環として、54件の研究および米国の2つの医療記録データベースを用い、2020年3月~2022年1月における症候性SARS-CoV-2感染者のデータを収集し解析を行った。

 54件の研究は、公表された研究が44件で実施された共同コホート研究が10件で、医療記録データベースも合わせると、計22ヵ国から約120万人のデータが収集された。内訳は、公表された研究44件で入院例1万501例および非入院例4万2,891例、共同コホート研究10件でそれぞれ1万526例および1,906例、医療記録データベースでそれぞれ25万928例および84万6,046例。

 主要評価項目は、SARS-CoV-2感染3ヵ月後における自己報告によるLong COVIDの有病率(主要な3つの症状クラスター[身体的痛みや気分変動を伴う持続性疲労、認知に関する問題、持続する呼吸器症状]のうち少なくとも1つを有する割合)とし、20歳以上と20歳未満に分け入院・非入院別ならびに男女別に推計した。そのほか、Long COVID症状クラスターの持続期間や相対的な重症度についても評価した。

感染3ヵ月後のLong COVID有病率は全体で6.2%、20歳以上の女性では10.6%

 解析に含まれた各研究・コホートの平均年齢の範囲は4~66歳、男性の割合は26~88%であった。

 モデルを用いた解析でCOVID-19以前の健康状態を調整した結果、SARS-CoV-2感染3ヵ月後における症候性SARS-CoV-2感染者のLong COVID有病率は、全体で6.2%であった。

 症状クラスター別では、身体的痛みや気分変動を伴う持続性疲労が3.2%、持続する呼吸器症状が3.7%、認知に関する問題が2.2%であった。

 SARS-CoV-2感染3ヵ月後のLong COVID有病率は、20歳以上の女性では10.6%であり、20歳以上の男性での5.4%と比べて高率であった。20歳未満では男女とも2.8%と推定された。


 SARS-CoV-2感染3ヵ月後にLong COVID症状を有していた人のうち、推定15.1%は12ヵ月後も症状が持続していた。
原著

2022/12/09

健康講座562 妊娠糖尿病歴と心血管・脳血管疾患のリスク増加

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 妊娠糖尿病歴は、心血管・脳血管疾患全体および個々の疾患のリスク増加と関連しており、その関連は従来の心血管リスク因子やその後の糖尿病発症に起因しないことが、中国・北京大学第一医院によるシステマティックレビューおよびメタ解析の結果で明らかとなりました。

 研究グループは、PubMed、Embase、Cochrane Libraryを用い、2021年11月1日までに発表された妊娠糖尿病と心血管・脳血管疾患発症との関連を報告した観察研究について検索しましました(2022年5月26日に更新)。

 主要評価項目は、妊娠糖尿病と、心血管・脳血管疾患全体および各種心血管・脳血管疾患との関連、副次評価項目は各種心血管・脳血管疾患および静脈血栓塞栓症との関連としました。

 妊娠糖尿病歴のある女性51万3,324例のうち、9,507例で心血管・脳血管疾患が確認された。一方、妊娠糖尿病歴のない女性800万人以上の対照のうち、7万8,895例に心血管・脳血管疾患が確認された。

 対照と比較して妊娠糖尿病歴のある女性では、心血管・脳血管疾患全体のリスクが45%(リスク比:1.45)、心血管疾患リスクが72%(1.72)、脳血管疾患リスクが40%(1.40)上昇した。

 同様に妊娠糖尿病歴のある女性は、冠動脈疾患(1.40)、心筋梗塞(1.74)、心不全(1.62)、狭心症(2.27)、心血管手術(1.87)、脳卒中(1.45)、および虚血性脳卒中(1.49)の発症リスクが上昇した。また、静脈血栓塞栓症リスクも、妊娠糖尿病歴のある女性で28%増加することが観察された(1.2)。

 その後糖尿病を発症しなかった女性に限ると、心血管・脳血管疾患リスクは低下したものの依然として有意なままであった(妊娠糖尿病歴のある女性全体のRR:1.45、その後糖尿病を発症しなかった女性のRR:1.09)。

 妊娠糖尿病のリスクが高い女性に対する早期介入と、妊娠糖尿病女性に対する継続的なモニタリングの必要性を強調するものであると思われます。
原著

2022/12/02

健康講座561 カマンベールチーズと認知症

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 東京都健康長寿医療センターは、高齢者女性を対象としたランダム化比較試験(RCT)において、カマンベールチーズの摂取による認知機能低下抑制を示唆し、認知症予防の可能性を見いだすことができたようです1)。

 国内外の研究報告によると、高齢者の認知症の中で最も多くの患者数を占めるのがアルツハイマー病であります。現在の日本では、認知症は高齢者人口の約15%を占め、その前駆状態である軽度認知障害(MCI)すなわち認知症予備軍は約13%を占めているようです。MCIの高齢者の約半数が5年以内にアルツハイマー病に移行することが報告されていることから、MCIの段階で予防対策を講じることが極めて重要です。さらに、エビデンスの質、科学的根拠のレベルの高さが重要となる中で、これまでの認知症予防の視点での食品研究はほとんどが観察研究でした。今回の試験結果は介入試験からの結果であり、信頼性は高いと思われます。

 今回の研究で一番の焦点となったのは、BDNF(脳由来神経栄養因子)の上昇であります。BDNFとは、神経細胞の発生・成長・維持・再生を促進させる、いわば“脳の栄養分”とも呼ばれる重要なタンパク質で、脳内、とくに記憶の中枢である海馬に高濃度に存在しているものです。BDNFの血中濃度は加齢や糖代謝異常、そして認知症に伴い減少することが示されており、臨床的に広く評価されている指標でもあるのです。

 以前、65歳以上の高齢女性を対象にチーズ摂取と認知機能に関する観察研究を行い、チーズ摂取の有無と認知機能の関連性を明らかにし、国内では、アルツハイマー病マウスでのカマンベールチーズの作用が示唆2)されていたことから、今回、実際のヒトを対象として、70歳以上のMCIの高齢女性を対象としたRCTを行ったようです。

 チーズは栄養価が非常に高く、タンパク質、ミネラル、ビタミンを効率よく補うことができる食品であり、世界で1,000種類以上も存在するようです。なかでも、カマンベールチーズには、デヒドロエルゴステロールという神経細胞において抗炎症作用を示す成分が含まれるほか、白カビの作用によりトリグリセリドからオレイン酸が、タンパク質からアンモニアが生じるようです。

 このような過程で生じたオレイン酸とアンモニアが反応し、オレアミドが産生される。これが脳内のミクログリアに作用することで、アミロイドβの除去2)やミクログリアの過剰な炎症を抑制2、3)すると考えられているようです。

 今回の研究では、カマンベールチーズ群と対照チーズ群でオレアミドの含有量を比較。その結果、カマンベールチーズ群の含有量は対照チーズ群の10倍以上であった。また、今回のRCTの結果、血中BDNF濃度がカマンベールチーズ群では対照チーズ群と比較して有意に増加し、ベースラインから変化率が6.18%も増加した。これらの結果を踏まえて、血中BDNF濃度が約6.2%も増加するということは、フレイル高齢者が1回あたり60分の運動を2回/週、3ヵ月継続したもの(変化率:7.6%)4)とほぼ同等の効果であり、注目に値するものです。
参考

2022/11/25

健康講座560 不眠と脳由来神経栄養因子(BDNF)

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 神経系から分泌されるタンパク質である脳由来神経栄養因子(BDNF) は、神経細胞の発生・成長・維持・修復に働くが、ヒトの睡眠の調節にも関与することが示されているものです。今回、京都大学は、血清BDNF濃度と睡眠障害との関連について短時間睡眠を伴う不眠(insomnia with short sleep duration:ISS)に着目し、横断研究を実施したようです。その結果、ISSが血清BDNF濃度の低下と関連している可能性が示されました。

 本研究の対象は、東京の総合病院1施設に勤務する看護師から登録された女性577人(35.45±10.90歳)。2015年11~12月に、血清BDNF濃度を測定し、自記式質問票により不眠(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒)の有無、睡眠時間を調査した。ISSは、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒のいずれか1つがあり、睡眠時間が6時間未満のものとした。

 主な結果は以下のとおり。

・577人のうち、21.3%が不眠と回答し、41.4%が短時間睡眠(6時間未満)であり、最終的にISSとされたのは12.5%だった。
・ISS群は、非ISS群と比較して血清BDNF濃度が有意に低かった。
・短時間睡眠を対象とした解析では、不眠のある群では、不眠のない群と比較して有意に血清BDNF濃度が低下していたが、正常睡眠時間(6時間以上)では不眠の有無による血清BDNF濃度の差は認められなかった。

 本研究は、ISSでは血清BDNF濃度が低下することを示した初めての研究であり、これらの結果が睡眠の悪化とBDNFの病態生理学的な関連性を解明するかもしれないとしています。

原著

2022/11/18

健康講座559 小児咳嗽と蜂蜜

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 小児の咳症状に関して蜂蜜は、小児の咳症状を和らげるために、家庭で一般的に用いられることがあるようです。University of Calabar Teaching Hospitalは、小児の急性咳嗽に対する蜂蜜の有効性を評価するためにシステマティックレビューを実施し、2018年4月10日、Cochrane Database of Systematic Reviewsに公開したようです。本レビューは、2010、2012、2014年に続く更新。本レビューの結果、蜂蜜は、無治療、ジフェンヒドラミン、プラセボと比較して、咳症状を多くの面で軽減するが、デキストロメトルファンとはほとんど差がない可能性が示唆された。また、咳の持続時間についてはサルブタモール、プラセボより短縮する可能性はあるが、蜂蜜使用の優劣を証明する強固なエビデンスは認められなかったと結論していました。


 MEDLINE、Embase、CENTRAL(Cochrane Acute Respiratory Infections Group's Specialised Registerを含む)などをソースとして、2014~18年2月のデータを検索したものです。また、2018年2月にはClinicalTrials.govとWHOのInternational Clinical Trial Registry Platformも同様に検索。対象とした試験は、急性の咳症状で外来受診した12ヵ月~18歳の小児に対する治療(蜂蜜単独、蜂蜜と抗菌薬の併用、無治療、プラセボ、蜂蜜ベースの咳止めシロップ、その他の咳止め薬)における無作為化比較試験で、899例の小児を含む6試験。今回の更新で、3試験331例の小児が追加された。これらの試験では、蜂蜜をデキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、サルブタモール、ブロメライン(パイナップル科の酵素)、無治療、プラセボと比較していた。

 主な結果は以下のとおり。

・蜂蜜は、無治療、プラセボより咳の頻度を減らす可能性がある。無治療との平均差(MD)は-1.05(95%CI:-1.48~-0.62、I2=0%、2試験・154例、エビデンスの確実性は中)、プラセボとのMDは-1.62(95%CI:-3.02~-0.22、I2=0%、2試験・402例、エビデンスの確実性は中)であった。

・蜂蜜は、デキストロメトルファンと同じ程度、咳の頻度を減らす可能性がある(MD:-0.07、95%CI:-1.07~0.94、I2=87%、2試験・149例、エビデンスの確実性は低)。

・蜂蜜は、ジフェンヒドラミンより咳の頻度を減らす可能性がある(MD:-0.57、95%CI:-0.90~-0.24、1試験・80例、エビデンスの確実性は低)。

・咳症状の緩和を目的とした蜂蜜の投与は、3日以内は効果的である可能性があるが、3日を超える投与は、咳の重症度、わずらわしい咳、親子の睡眠への咳の影響を減少させることにおいて、プラセボやサルブタモールを上回る優位性がない(エビデンスの確実性は中)。

・咳尺度を用いた5試験では、蜂蜜と、蜂蜜を混ぜたブロメラインを比較して、咳の頻度と重症度を下げる効果にほとんど差がなかった。

・有害事象については、蜂蜜群と対照群に差はなかった。

参考までに

原著

2022/11/11

健康講座558 飲み物とうつ病

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 加糖飲料やコーヒー、紅茶は最も消費されているノンアルコール飲料であり、健康に対し重大な影響を及ぼします。さまざまな飲料の消費量とうつ病との関連を検討した論文がありました。


 対象はNIH-AARP Diet and Health Study(食事・健康調査)に参加した26万3,923人。1995~1996年に摂取したさまざまな種類の飲料を評価し、2000年以降に自己申告によるうつ病診断を実施した。オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)は、多変量ロジスティック回帰分析から導いた。

 主な結果は以下のとおり。

・1日当たり4缶または4杯以上摂取している場合とまったく摂取しない場合とを比較したORは、ソフトドリンク1.30、フルーツドリンク1.38、コーヒー0.91であった。

・アイスティーとホットティーでは関連はなかった。

・主にダイエット飲料を飲む人 vs 通常の飲料を飲む人による層別解析でのORは、ソフトドリンクで1.31 vs 1.22、フルーツドリンクで1.51 vs 1.08、加糖アイスティーで1.25vs 0.94であった。

・飲料の非摂取者と比較し、無糖のコーヒーや紅茶を飲んでいた人では、うつ病のリスク低下と関連していた。一方、砂糖や蜂蜜ではない人工甘味料を添加していた人では、リスク上昇と関連していた。

・加糖飲料(とくにダイエット飲料)の頻繁な消費が高齢者のうつ病リスクを高める一方で、コーヒーはリスクを軽減させる可能性があることが示唆された。

参考にしてください。

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...