2022/08/15

健康講座532 大腸劣化と腸内細菌

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

『大腸劣化』を防ぐ短鎖脂肪酸とうものがあります。

 大腸劣化とは、『大腸に多く存在する腸内フローラが、偏った食生活やストレス・睡眠不足などによって老廃物や有害物質が作られることで正常な機能が保てなくなり、最終的には大腸がんなどの大腸疾患のみならず全身の健康リスクにまで発展すること』を意味するそうです。

 腸内フローラには数千種類以上、数百兆個以上の種々の菌が存在し、善玉菌優位のバランス(善玉菌、悪玉菌、日和見菌それぞれの比率が2:1:7の状態)保持が必要とされるそうです。しかし、無理なダイエットによる炭水化物制限による食物繊維不足、過度な動物性タンパク質摂取や食の欧米化進展という近年の日本人の偏った食文化が、悪玉菌へ餌を供給するとともに悪玉菌優位の環境をもたらし、最終的には腸内劣化により大腸がんなどの発症を招いてしまうのです。

 回避する方法として、善玉菌の餌となる短鎖脂肪酸を増やすコツとそのメカニズムがあります。短鎖脂肪酸とは、ビフィズス菌や酪酸菌が水溶性食物繊維などを食べた際に産生される物質で、酢酸や酪酸などを示し、腸内環境を弱酸性にして善玉菌が発育しやすい環境へ整えるものです。ビフィズス菌から産生される酢酸には整腸作用、免疫力向上、血中コレステロール低下などの作用が期待でき、酪酸菌から産生される酪酸には、大腸のバリア機能強化や、大腸を動かすエネルギーの産生作用があります。善玉菌の餌となるオリゴ糖、イヌリン、大麦や海藻類を積極的に取ることが重要であり、穀物摂取量低下による食物繊維不足は注意です。

 短鎖脂肪酸の増加には食物繊維の摂取が有用であることについて、臨床試験(水溶性食物繊維を多く含むスーパー大麦グラノーラを1ヵ月間、毎日摂取する試験)があり、「排便量や便の性状だけではなく、肌の状態や睡眠状態の改善もみられたようです。腸内環境の整備が整腸作用だけに留まらず、全身の健康に貢献することを示唆する結果でした。

 日本人の腸内フローラについて、キット検査結果を集計したところ、40代以降の4人に1人は大腸劣化の疑いがあることが明らかとなったようです。ただし、腸内フローラの多様性については、20代で低かったらしく、加齢だけが大腸劣化の原因ではないことを明らかにされました。

 腸内細菌叢と体臭の関係につい、人間が放出するガスには皮膚ガスと呼ばれるものがあり、判明しているだけでも300種を超えるのです。皮膚ガスの放散経路には、「表面反応由来」「皮膚腺由来」「血液由来」の3経路があり、表面反応由来の加齢臭は皮脂の酸化が原因のため、洗って落とすことができます。しかし、血液由来のダイエット臭(アセトン)や疲労臭(アンモニア)は洗っても落とすことができないようです。

 では、どのように血液由来の臭いを減らせば良いのだろうか? 疲労臭の主成分アンモニアの血中濃度は、腸内細菌の改善によって減らせることが明らかになっているのです。そこで、ラクチュロース(牛乳に含まれる乳糖を原料として作られる二糖類。大腸に到達後、ビフィズス菌の餌になる)の摂取試験を行い、ビフィズス菌数の増加に伴う皮膚からのアンモニア放散量の減少を示唆したという報告も出ています。

2022/08/12

健康講座531 帯状疱疹ワクチン

 みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 ワクチンで予防できる疾患として、「水痘(水ぼうそう)と帯状疱疹」があります。

水痘は、時に重症化し、しかも空気感染によって容易に伝播する感染症です。妊婦にとっては最も避けたい感染症の1つであります。また、同じ水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって発症する帯状疱疹は、神経痛により生活の質を大きく低下させてしまうのです。

このような水痘・帯状疱疹を予防するには、ワクチンが有効かつ重要であります。現在、水痘・帯状疱疹ウイルスに対してわが国で使用できるワクチンは2種類あります。従来の水痘生ワクチンと、2020年1月に発売された、帯状疱疹予防に特化した不活化ワクチンである。

水痘と帯状疱疹の特徴と疫学、そしてワクチンの活用法と注意点について。

水痘

感染経路:空気感染、飛沫感染

潜伏期:約14日間

周囲に感染させうる期間:水疱が痂疲化(かさぶた)するまで

学校保健法:第2種(出席停止期間:すべての発しんがかさぶたになるまで)

感染症法:5類(入院例に限る)


全身性の水疱性発疹と発熱を来たし、多くは軽症で自然に軽快する。しかし成人では、肺炎などの皮膚外病変により重症化しやすく、成人の死亡率は小児の約8倍にもなる2)。成人の中でも最もハイリスクなのは、妊婦である。妊娠第1・2三半期の初感染では先天性水痘症候群(胎児水痘症候群)のリスクとなり、妊娠第3三半期の初感染では10~20%で水痘肺炎を併発し、時に致死的となる3)。さらに分娩5日前から48時間後では重篤な新生児水痘を生じうる3)。そのため、水痘未感染の妊婦への感染予防は、極めて重要である。しかしながら、水痘は感染が広がりやすく、1人の感染者から平均8~10人に感染させうる。家庭や職場での空気感染対策は困難であり、ワクチン接種は重要な感染予防策である。


水痘の罹患率は、ワクチンの定期接種化により激減している。ワクチンギャップや、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)への曝露機会の減少により、水痘の抗体を獲得しないまま成人する層が一定数いると思われる。現在、水痘の報告者数のほとんどは小児だが、今後は成人の水痘例が増加するかもしれない。


帯状疱疹

感染経路:接触感染、空気感染

周囲に感染させうる期間:皮疹が痂疲化するまで

水痘・帯状疱疹ウイルスは水痘罹患後に仙髄・腰髄の後根神経節に潜伏感染し、宿主の加齢や免疫力低下に伴う細胞性免疫の低下により再活性化し、帯状疱疹を起こす。発症すると皮膚分節に沿ったチクチクとした痛みに続いて、水疱を伴う皮疹を生じる。多くの場合は片側性であるが、免疫抑制者では全身に広がる汎発性帯状疱疹となりうる。皮疹は7~15日前後で痂疲化し、感染性がなくなる。合併症としては帯状疱疹後神経痛(Post herpetic neuralgia:PNH)が最も多く、ほかにラムゼイ・ハント症候群、脊髄炎、遅発性の脳梗塞などがある。


帯状疱疹は、約3人に1人が一生のうちに1度以上経験するとされる5)。帯状疱疹の罹患率は4~10人/1,000人年、PHNは2.1/1,000人で、いずれも年齢が上がるにつれて罹患率も上がる6)。

帯状疱疹の罹患率は、水痘ワクチン導入後に増えており7,8)、水痘の流行規模の縮小により、自然感染によるブースターの機会が減ったことが原因ではないかと考えられている。実際に、水痘を発症した小児と暮らす成人では、10~20年後に帯状疱疹が発症するリスクは約30%減ると報告されている9)。


水痘の予防には水痘生ワクチンが、帯状疱疹の予防には、水痘生ワクチンと帯状疱疹不活化ワクチンの2種類が使用される。


(1)効果

発症予防効果は、1回接種で約80%、2回接種で93%である。重症化は、1回接種で約99%、2回接種で100%予防する1)。

(2)副反応

ワクチン接種により一般的な副反応のほか、水痘ワクチンに特異的な副反応としては、接種後1~3週間後に発熱、3~5%に水痘様発疹がみられることがある。

(3)禁忌

妊婦、明らかな免疫抑制状態にある人、このワクチンによる重度のアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を呈した既往のある人

(4)注意事項

生ワクチン接種後は、2ヵ月間は妊娠を避ける。

2種類のワクチンを使用することができる。発症予防効果は不活化ワクチンでより高い。


以下、不活化ワクチンについて。

(1)効果

帯状疱疹の発症予防効果は、水痘生ワクチンより不活化ワクチンで高いことが知られている。不活化ワクチン2回接種による帯状疱疹の発症予防効果は50歳以上で97.2%、70歳以上で89.8%、帯状疱疹後神経痛は50歳以上で100%、70歳以上で85.5%である10)。一方の水痘生ワクチンでは、50歳以上における帯状疱疹発症抑制率は51%、帯状疱疹後神経痛の減少率は66%である 。ただし、いずれも免疫原性の持続が証明されているのは10年未満11,12)であり、今後は追加接種などが議論になる。

(2)副作用

不活化ワクチンの方が、生ワクチンよりも副作用の頻度が高い。生ワクチンの臨床試験の結果では、局所性(注射部位)の副反応が80.8%に認められ、主なものは疼痛(78.0%)、発赤(38.1%)、腫脹(25.9%)であった。全身性の副反応は64.8%に認められ、主なものは筋肉痛(40.0%)、疲労(38.9%)、頭痛(32.6%)であった。他のワクチンに比較して局所性副反応の頻度は高いが、いずれも3日前後で消失することがわかっている10)。

(3)禁忌

両者とも、このワクチンによる重度のアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を呈した既往のある人。水痘生ワクチンでは妊婦、明らかな免疫抑制状態にある人。

(4)対象

対象は慢性疾患をもつ50歳以上の成人で、とくに慢性腎不全、糖尿病、関節リウマチ、慢性呼吸器疾患をもつ人に推奨される13)。

日常診療で役立つ接種ポイント

1)妊娠を希望する女性に対する、水痘ワクチン

先に述べたように、妊婦の水痘は重症化のリスクが高い。妊娠中の水痘は何としても防ぎたい。水痘の罹患歴がなく、かつ水痘ワクチンの接種歴のない女性が妊娠を希望する際には、水痘ワクチンを接種しておきたい。また、接種後2ヵ月間は妊娠を避ける必要もある。

2)50歳以上に対する帯状疱疹予防のワクチン

水痘の罹患歴がある50歳以上の成人には、帯状疱疹不活化ワクチンの2回接種もしくは水痘ワクチンの1回接種を勧めたい(免疫抑制者など生ワクチンが禁忌とされる場合には、帯状疱疹不活化ワクチンを選択する)。帯状疱疹は高齢者ほどリスクが高く、帯状疱疹後神経痛を発症すると著明にQOLが低下する。なお、帯状疱疹は約6.4%に再発が認められる14)ため、帯状疱疹の罹患歴がある場合の再発予防としても有効である。


小児における水痘ワクチンの定期接種化により、水痘の発症者は今後も減り続けるだろう。一方で、水痘の罹患歴のある者のブースター機会も減るため、今後しばらく帯状疱疹の罹患率は上昇することが予測される。水痘は非常に感染力が強く、ワクチン接種による予防が重要である。妊婦の水痘を予防し、帯状疱疹後神経痛を予防するために、妊娠を希望する女性、また、50歳以上の高齢者へのワクチン接種を忘れないようにしたいです。


水痘ワクチンについて

ワクチンの種類

生ワクチン
(従来の水痘ワクチン)

不活化ワクチン

当院での接種

〇
当院で接種できます
予約は受付にて

×
当院では接種
できません

商品名

乾燥弱毒性
生水痘ワクチン

シングリックス筋注用

定期/任意

任意

任意

接種回数

1回

2回

摂取量

1回 0.5ml

1回 0.5ml

接種方法

皮下注射

筋肉内注射

摂取間隔

 

2か月以上あけて
2
回目の接種
(6か月以内)

費用

1回6000円

1回18,000円~


参考

こどもとおとなのワクチンサイト

国立成育医療センター プレコンセプションケアセンター



2022/08/10

健康講座530 加工食品の悪影響対策の兆し

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 非健康的な食品とされることの多いソーセージやベーコン、ハムなどの加工肉の体への影響も気になるという人に研究結果が発表されました。日本を含む東アジアでよく目にするタデ科植物の「イタドリ」が、加工肉の保存目的で使われている添加剤の健康への悪影響を抑制できるかもしれないということでございます。

 イタドリは、英国では生態系を乱す外来種として扱われており、成長が速くて庭を侵食したりするため、忌避されがちな植物だそうです。その“嫌われ者”のイタドリが、加工肉に添加されている亜硝酸塩による健康への悪影響を抑制してくれる可能性のあることが分かったのです。なお、亜硝酸塩を摂取すると体内で、N-ニトロソ化合物が生成されるようです。N-ニトロソ化合物は発がん性物質の一つとされており、亜硝酸塩を多く含む食事が、大腸がんのリスクの高さと関連する可能性を指摘した研究結果が報告されているのです。

 イタドリやローズマリー、緑茶をはじめとする植物や果物を材料として、レスベラトロールなどの成分を抽出し、抗菌活性を持つと期待される食品添加剤を作成しました。その添加剤を、従来の製法で作られた加工肉に加えることで、ヒトへの影響がどう変化するかを検討したのです。

 研究対象は健康な成人63人(年齢25.4±8.5歳、BMI22.3±2.1、肉摂取量254±38g/日)。通常の製法で作られた加工肉を摂取する条件や、イタドリなどから新たに作成した添加剤を追加した加工肉を摂取する条件、亜硝酸塩を除去した加工肉を摂取する条件など、いくつかの異なる条件設定の下、それぞれ300gの肉を2週間摂取してもらい、糞便中のN-ニトロソ化合物レベルを比較した。

 その結果、イタドリなどから作成した添加剤を用いることで、加工肉を食べても糞便中のN-ニトロソ化合物レベルが著しく低くなることが明らかになったのでございます。加工肉摂取に伴い体内で生成され、発がんリスクに影響を及ぼす可能性のある化合物が、天然の添加物を用いることで減少することを示しているかもしれません。

 亜硝酸塩が除去されていない加工肉を食べるという条件設定でも、天然の添加物は一定の保護効果を発揮するようでございます。この結果は、防腐剤として使われている亜硝酸塩を完全に除去することができない食品でも、天然の添加物を使用することで亜硝酸塩の潜在的な悪影響を部分的に抑制できることを示唆しています。

原著

2022/08/08

健康講座529 コーヒーとコレステロールの一研究結果

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 「コーヒーは身体に良い」という論文報告が散見されますが、コーヒー豆に含まれるジテルペン(とくにカフェストール、カーウェオール)が血清コレステロールを上昇させてしまうという報告1)もあるようです。しかしながらですよ、このジテルペンの影響はコーヒーの抽出方法によって異なるようです。そこで今回、ノルウェー・トロムソ大学がコーヒーの抽出方法、なかでも研究数の少ないエスプレッソコーヒー(短時間で高圧抽出)と血清総コレステロール(S-TC:serum cholesterol)との関連性を調査したようです。その結果、エスプレッソコーヒーの消費量は、S-TCの増加と関連しており、女性と比較して男性のほうが有意に強い関連が示されたようです。また、ボイルド(サイフォン式など)/プランジャーコーヒー(フレンチプレスなど)を摂取したの場合は男女ともにS-TCが増加し以前の研究で示された結果と同様だったが、フィルターろ過コーヒーに至っては女性でS-TCがわずかに増加したことが示されたようです。

 研究者らは、ノルウェー北部で行われた横断研究であるトロムソ研究第7回調査(n=2万1,083、40歳以上[平均年齢:56.4歳])の人口データを使用。エスプレッソコーヒーの消費量とS-TCの関連を調査し、性別とコーヒー消費量の関連などを評価しました。質問ではコーヒーの抽出方法を「フィルターコーヒー」「ボイルド/フレンチプランジャーコーヒー(粗挽きコーヒー)」「インスタントコーヒー」「エスプレッソベースのコーヒー(コーヒーマシン、カプセルなど)」の4種類とし、1日の消費量に応じて、対象者をカップ0杯、1〜2杯、3〜5杯、6杯以上にグループ分けしたものです。


 主な結果は以下のとおりでございます。

・エスプレッソの摂取量が1日あたりカップ0杯の参加者と比較して、毎日カップ3~5杯飲む人は、S-TC増加と有意に関連しており、女性で0.09mmol/L(95%信頼区間[CI]:0.01~0.17)、男性で0.16mmol/L(95%CI:0.07~0.24)だった。
・ボイルド/プランジャーコーヒーについても1日あたりカップ0杯の人と比較して、毎日カップ6杯以上飲んだ場合は、S-TCが増加し、女性で0.30mmol/L(95%CI:0.13~0.48)、男性で0.23mmol/L(95%CI:0.08~0.38)だった。
・フィルターろ過のコーヒーを毎日カップ6杯以上の飲んだ場合のS-TCは、女性で0.11mmol/L(95%CI:0.03~0.19)高くなるのに対し、男性では関連性がみられなかった。
・インスタントコーヒーの消費量に有意な線形傾向があったが、飲んでいない参加者を除外した場合、用量反応関係は示されなかった。
・ボイルドまたはプランジャーコーヒーを除くすべてのコーヒー抽出型で性差が有意にみられた。

 なお、エスプレッソコーヒーのようにノンフィルターコーヒーではLDLコレステロールを含む成分なども取り除かれていないことから、1日あたりカップ9杯以上を摂取すると心血管疾患(CVD)による死亡リスクが最大25%増加すると、他研究2)より報告されているようです。


原著

2022/08/05

健康講座528 未成年においてのGLP-1受容体作動薬デュラグルチド

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

 0~18歳の2型糖尿病において、GLP-1受容体作動薬デュラグルチドの週1回投与(0.75mgまたは1.5mg)は、メトホルミン服用や基礎インスリンの使用を問わず、26週にわたる血糖コントロールの改善においてプラセボよりも優れることが、米国・ピッツバーグ大学による検討で示されました。BMIへの影響は認められなかったようです。

以下結果をまとめますと、


デュラグルチド0.75mg、1.5mgを週1回投与

 研究グループは、10歳以上18歳未満の2型糖尿病で、BMIが85パーセンタイル超、生活習慣の改善のみ、もしくはメトホルミン治療(基礎インスリン併用または非併用)を受ける154例を対象に、26週にわたる二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。

 被験者を無作為に1対1対1の割合で3群に割り付け、それぞれプラセボ、デュラグルチド0.75mg、デュラグルチド1.5mgを週1回皮下注射で投与した。被験者はその後26週の非盲検の延長試験に組み込まれ、プラセボ群だった被験者に対し、デュラグルチド(0.75mg、週1回)を26週間皮下注射で投与した。

 主要エンドポイントは、ベースラインから26週までの糖化ヘモグロビン値の変化だった。副次エンドポイントは、糖化ヘモグロビン値7.0%未満達成、および空腹時血糖値とBMIのベースラインからの変化など。安全性についても評価が行われた。

糖化ヘモグロビン値7.0%未満、プラセボ群14%に対しデュラグルチド群51%

 計154例が無作為化を受けた。26週時点の平均糖化ヘモグロビン値は、プラセボ群が0.6ポイント上昇したのに対し、デュラグルチド群では、0.75mg群で0.6ポイント、1.5mg群で0.9ポイント、いずれも低下した(対プラセボ群のp<0.001)。

 また26週時点で、糖化ヘモグロビン値7.0%未満を達成した患者の割合は、プラセボ群14%に対しデュラグルチド群では51%と有意に高率だった(p<0.001)。

 空腹時血糖値も、プラセボ群で上昇(17.1mg/dL)したのに対し、デュラグルチド群では低下が認められた(-18.9mg/dL、p<0.001)。一方でBMIについては、両群間で差は認められなかった(プラセボ群0.0、デュラグルチド統合群-0.1、p=0.55)。

 有害事象は、胃腸有害イベントの発生頻度が最も多く、26週にわたってデュラグルチド群でプラセボ群よりも高率に認められた。

 以上より、デュラグルチドに関する安全性プロファイルは、成人で報告されたものと一致していたと考えられます。

参考までに。

原著

2022/08/03

健康講座527 ストレスと免疫

みなさんどうもこんにちは。

OGDMCLです。

 ストレスは、免疫システムを弱めてさまざまな疾患を引き起こす可能性のあることが、米南カリフォルニア大学の研究で示唆されました。衝撃的な出来事や仕事の重圧、日々のストレスや不当な扱いなどの経験は、免疫システムの老化スピードを速めることが示されたとのことです。

 免疫機能は加齢に伴い大きく低下し、老朽化した白血球が増える一方で、感染と闘える新しい白血球の数はわずかとなるようです。こうした現象は、「免疫老化」と呼ばれているそうです。免疫老化はがんや心血管疾患、肺炎の発症リスクを高めるだけでなく、ワクチンの有効性の低下や器官系の老化とも関連するとのことでございます。しかし、同じ年齢の人でも健康状態に大きな差があるのは、ストレスと免疫システムの老化との関連から説明できるのではないかと考え、今回の研究を実施したとのことです。

 まず、研究対象とした50歳以上の男女5,744人に、ストレスフルな出来事や慢性的なストレス、日常的あるいはこれまでに経験した不当な扱いなどの社会的ストレスを評価する質問票に回答してもらいました。次に、対象者から血液サンプルを採取し、フローサイトメトリーと呼ばれる手法で、抗原に曝されたことのないナイーブT細胞と最終分化したT細胞の割合など、免疫システムの老化について分析しました。

 その結果、ストレススコアの高い人では、抗原からの刺激を受けてすぐに活性化するナイーブT細胞が少なく、最終分化したT細胞が多いことが示され、免疫システムの老化が進んでいることが明らかになったようです。こうした関連は、教育や喫煙、飲酒、体重、人種あるいは民族を調整した後も認められました。

 免疫細胞であるT細胞は胸腺で作られるのですが、その産生量は、胸腺の組織が加齢により縮んで脂肪組織に置き換わるに伴い減っていくようです。過去の研究では、胸腺のこのような老化は、質の悪い食生活や運動量の少なさといった、社会的ストレスと関連する生活因子の影響により加速することが示唆されています。今回の研究では、質の悪い食生活と低運動量を統計的に調整すると、ストレスと免疫老化の加速の関連はそれほど強くなかったということでございます。多くのストレスを抱えている人では、食事の質や運動量が低下しがちです。このことは、これらの人で免疫老化が進んでいる理由の一つになるのではないかと推測されます。

 免疫システムを弱める他の要因として考えられるのは、高頻度に生じる感染症の一つであるサイトメガロウイルス(CMV)感染症だそうです。先行研究では、社会的ストレスがCMVの活性化を惹起し、それに応答するために免疫システムが多くの資源を注ぎ込んで、T細胞を産生せざるを得ない状態になることが示唆されているのです。このようにして産生されたT細胞の一部は、機能しなくなった古い細胞として残るのだということです。

 今回の研究では、CMVを抑制することでストレスとT細胞の状態との関連が減弱することが示されたようです。このことから、慢性的なストレスによってCMVの再活性化が日常的に起こるようになり、免疫システムの老化が加速するという経路も考えられます。CMVワクチンを開発することで、免疫システムの老化を抑えることができる可能性があるとの見解を示しているようです。


原著

2022/08/01

健康講座526 ミトコンドリア病

みなさんどうもこんにちは。

小川糖尿病内科クリニックでございます。

今回は、マニアックな内容となります。我慢できる方のみ読み進めて頂ければ幸いです。

ミトコンドリア病についての内容となります。

 ミトコンドリア病は、ヒトのエネルギー代謝の中核として働く細胞内小器官ミトコンドリアの機能不全により、十分なATPを生成できずに種々の症状を呈する症候群の総称であるのです。ミトコンドリアの機能不全を来す病因として、電子伝達系酵素、それを修飾する核遺伝子群、ピルビン酸代謝、TCAサイクル関連代謝、脂肪酸代謝、核酸代謝、コエンザイムQ10代謝、ATP転送系、フリーラジカルのスカベンジャー機構、栄養不良による補酵素の欠乏、薬物・毒物による中毒などが挙げられるのでございます。

 ミトコンドリア病の有病率は、小児においては10万人当たり5~15人、成人ではミトコンドリアDNA異常症は10万人当たり9.6人、核DNA異常症は10万人当たり2.9人と推計されているようです1)。一方、ミトコンドリア脳筋症(MELAS)で報告されたミトコンドリアDNAのA3243G変異の保因者は、健常人口10万人当たり236人という報告があり2)、少なくとも出生10万人当たり20人がミトコンドリア病と推計されているようです。

 ミトコンドリアは、真核細胞のエネルギー産生を担うのみではなく、脂質、ステロイド、鉄および鉄・硫黄クラスターの合成・代謝などの細胞内代謝やアポトーシス・カルシウムシグナリングなどの細胞応答など、多彩な機能を持つものであり、核と異なる独自のDNA(ミトコンドリアDNA:mtDNA)を持っています。

 ミトコンドリア病の分類があります。ミトコンドリア病の分類は、I 臨床病型による分類、II 生化学的分類、III 遺伝子異常による分類の3種に分かれています。それぞれ、オーバーラップすることが知られているが、歴史的にこの分類が現在も使用されているのです。


    • これらの疾患は、臨床試験で効果が証明された薬物治療は、いまだ存在しないのです。2012年に発表されたわが国のコホート研究では、一番症例数の多いMELASは、発症して平均7年で死亡しています。また、その内訳は、小児型MELASで発症後平均6年、成人型MELASでは発症後平均10年で死亡しているのです。そのほか、小児期に発症するLeigh脳症では、明確な疫学研究はないものの、発症年齢が低ければ低いほど早期に死亡することが知られています。いずれにしても、慢性進行性に経過する難病で、多くは寝たきりとなり、心不全、腎不全、多臓器不全に至り死亡する重篤な疾患であります。

これらの疾患は、代謝性アシドーシスもよくみられる所見であり、アニオンギャップが20以上開大すれば、アシドーシスの存在を疑うことが重要と言われております。乳酸とピルビン酸のモル比(L/P比)が15以上(正常では10)、ケトン体比(3-hydroxybutyrate/acetoacetate:正常では33))が正常より増加していれば、1次的な欠損がミトコンドリアマトリックスの酸化還元電位の異常と推測できるようです。

頭部単純CT検査では、脳の萎縮や大脳基底核の両側対称性石灰化などが判明することが多く、その場合、代謝性アシドーシスの存在を疑う根拠となります。

頭部MRI検査では、脳卒中様発作を起こす病型であれば、T1で低吸収域、T2、Flairで高吸収域の異常所見がみられます。


最も診断に有用な特殊検査は、筋生検であります。筋病理では、Gomori trichrome変法染色で、増生した異常ミトコンドリアが赤ぼろ線維(RRF:ragged-red fiber)として確認でき、ミトコンドリアを特異的に染色するコハク酸脱水素酵素(SDH)の活性染色でも濃染する。RRFがなくても、チトクロームC酸化酵素(COX)染色で染色性を欠く線維やSDHの活性染色で動脈壁の濃染(SSV:SDH reactive vessels)を認めた場合、本症を疑う根拠となるようです。


従来、乳酸・ピルビン酸がミトコンドリア病のバイオマーカーとして用いられてきました。しかし、これらは常に高値とは限らず、血液では正常でも、髄液で高値をとる場合も多いようです。そこで、最近、バイオマーカー「GDF15」というのが出て参りました。このマーカーは、感度、特異度ともに98%と、あらゆるMELASの診断に現在最も有用と考えられているものです3)。従来用いられていた乳酸、ピルビン酸、L/P比、CKと比較しても、最も臨床的に有用であり、GDF15は髄液にも反映しており、この点で髄液には分泌されないFGF21に比較して、より有用性が高いとのことです。


本症に対する薬物治療の開発は、多くの国で臨床試験として行われているが、2018年2月1日時点で、臨床試験で有効性を証明された薬剤は世界に存在しないのが現実です。欧州では、Leber遺伝性視神経萎縮症に対して限定的にidebenone(商品名:Raxone)が、米国では余命3ヵ月と宣告されたLeigh脳症に対するvatiquinone(EPI-743)がcompassionate useとして使用されているようです。わが国では、MELASに対して、脳卒中様発作時のL-アルギニン(同:アルギU)の静注および発作緩解期の内服が、MELASの生存予後を大きく改善しており、適応症の申請を準備しているとのことです。


本症は臨床的に非常に多様性を有し、発症年齢も小児から成人、罹患臓器も神経、筋、循環器、腎臓、内分泌など広範にわたる。

診療科としては、小児科、小児神経科、神経内科、循環器内科、腎臓内科、耳鼻咽喉科、眼科、精神科、老年科、リハビリテーション科など多岐にわたり、最終的には療養、療育施設やリハビリ施設の紹介も必要となる。

個人的な、備忘録的な内容で恐縮です。



  • 1)Gorman GS, et al. Ann Neurol. 2015;77:753-759.
  • 2)Manwaring N, et al. Mitochondrion. 2007;7:230-233.
  • 3)Yatsuga S, et al. Ann Neurol. 2015;78:814-823.
  • 4)Gorman GS, et al. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16080.

ロゴ決定

ロゴ決定 小川糖尿病内科クリニック

皆さま、こんにちは。 当院のロゴが決定いたしました。 可愛らしいうさぎをモチーフとして、小さなお花をあしらいました。 また、周りは院長の名字である「小川」の「O(オー)」で囲っております。 同時に、世界糖尿病デーのシンボルであるブルーサークルを 意識したロゴとなって...